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自分が人生で感じた奇跡の組織体験(2)

前回の続き。大学を出て7年くらい経ったあたりですが、再び組織の奇跡的なハーモニーを感じられた体験がありました。

当時の僕は10人くらいのチームに属していて、営業のややお兄さん的なポジションとして若手の面倒を見つつ、部署の目標達成に奮闘していました。そのクオーター、僕の部署は、無理だと思っていた部署目標を達成し、しかもベテランから若手まで全員が個人の目標をクリアするという奇跡が起きたのです。

そこで僕が学んだのは、「頑張りが伝播する」という事実です。頑張っている人というのは、周りから自然と応援されますし、サポートも得られるのでさらに結果が出やすくなります。そして誰か一人が全力を出していると、そのエネルギーが周囲に伝わっていき、周囲の人も頑張るようになります。また、頑張ってない人が居ると、自然とお互いに叱咤が飛びます。結果として、一人一人が自分自身の全力を出し切る状態、というのが組織の風土から作られて行きます。

「全力を出し切る」というのは、結果を決める大きな要素です。野球などのスポーツでは「球際(たまぎわ)に強い」という言葉がありますが、ギリギリ取れるか取れないかというボールに手が届く、という事です。ギリギリの真剣勝負の、最後の紙一重のところは、集中力だったり、気持ちの入れようが結果を分けるのです。ビジネスでいえば、相手を動かす気迫だったり、資料を最後まで拘って質を上げる姿勢だったり、という部分がいわゆる球際に当たる部分だと思いますが、こうしたところが実は結果を大きく左右します。勝負どころのプレゼンで誤字脱字や資料のミスがあるようでは目も当てられませんが、全力を出しきれている状態だとそうした紙一重の部分の質が上がります。

また、組織には「勢いに乗る」という現象があります。他の人が結果を出していると、そこに自分を投影して「自分にもできるんじゃないか」という気持ちになります。よく、起業家輩出企業と言われる組織にいると、起業をしないといけないような気持になってくる、と言います。これは、周りのみながどんどん起業していくので、自分もできるんじゃないか、という気持ちが自然に醸成されてくる、という現象です。こうしたことはある種の「勢い」として、個人に「勇気」や「思い切り」というものを与えます。思い切って取り組んだ仕事と、おっかなびっくり取り組んだ仕事では、結果が異なります。この時は、まだ結果が出ていなかった若手が、周りの勢いに押されて大きなプロジェクトを決めてきた、ということが起き、勢いが与えるパワーを実感しました。

こうして、一人一人が全力を出し切り、それが勢いとなってさらにメンバーの能力を引き出し、高い目標を達成してしまったのです。その結果、組織には大きな感動と、そして深い信頼が生まれました。涙を流して喜び合った仲間との時間はとても大切な思い出ですし、この組織が「響き合った」経験は、とても美しい経験として私の胸に刻み込まれました。組織って音楽と同じだな、とその時改めて思ったのです。

あれからずーっとこの体験を自分は追っています。今は会社のリーダーとなり、こうした現象をトップから創り出す難しさを感じています。でも、もっともっと自分が理想とする組織を伝えて行かないといけないな、とこんなことを思い出しながら改めて感じる次第です。