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マンガ Su Su Pim! へのコメントを頂きました

 
先日ローンチしたタイ語マンガSu Su Pim! ですが、タイの書評サイトに素敵なコメントを頂きました。日本語訳を紹介しておきます。
こうやってタイの方に読まれていくのは本当に感慨深いです~☆

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SusuPim、読了しました。

上司として、また事業主として、ピムのような人はよく見かけるという印象を受けました。一生懸命仕事をしてくれるけれど、時々詰めが甘い部下。この本からは実際にともに働く周囲の人の姿を、あるいは自分自身を見つけることができるかもしれません。私たちは時と場合によって様々なキャラクターになります。でも、みなが同じく目指しているものがあります。それは協力しあって、ビジネスを継続させていくということです。きちんと自分自身を振り返って、用心深く、注意深く、そして仲間たちへの愛を持って仕事をすれば、大きな失敗や悲惨な状況を招くことはありません。

私自身は原作者、漫画家、翻訳者といった方々が協力してタイ人読者の為になるような作品を創り上げてくれたことに感銘を受けました。原作者であるJackさんは、タイの人々に自己開発の考え方を漫画という理解しやすいやすい形で伝えるために、2年間もの時間をかけて想いを形にできる漫画家ときちんと伝わる形に翻訳できる翻訳家の方を探されたとのことです。思い通りのものを作るために何度も議論を重ねたくさんのステップを経てこの本を生み出された、このタイ人への想いに触れて私も応援したいと思いました。

SusuPimは一般の書店で販売していますが、今は紀伊国屋では20パーセント割引になっています。また他にもReaderyでオンライン注文することもできます。
SusuPimはタイのエッセンスが少し入った日本の漫画です。学生、そして仕事をしている全ての人にオススメです。新人であっても、部下の面倒を見る立場の人であっても、また自分のビジネスを持っている人であっても、他の人へ理解を示し思いやりを持って仕事をすることは全ての基本ですから。

この本の第1章をご覧になりたい方はAsian Idenitityのfbページから読むことができます。そして購入したいと思われたら、あるいはコメントをしたいと思われたらそのままAsian Identityのfbアカウントにメッセージを送ることも可能です。
ぜひこの本を楽しんで、素敵な社会人生活を送ってください。

良いキャリアを作るために持つべき4つの考え

今週末、Kinokuniyaでタイの皆さん向けにイベントをやります。

タイ人向けに出版したマンガ単行本のPRイベントではあるのですが、そこにはこんな思いを込めています。

それは「良いキャリアとは何か?」という事について。4つほどの考え方を紹介したい。

①「仕事そのもの」を目的にすること

本当の人生の満足感は、地位や名声、またおカネではもたらされない。人は本当に自分にとって「意味のある仕事」をすることで本当に幸福になれる。

「ikigai」という概念も流行っているが、本当に自分が愛せることは何か、本当に自分がパッションを感じられることは何か、を見つけることだ。お金や名声が大切ではないとは言わないが、それらを得ても人は結局満足しないことは、多くの学者や偉人によって証明されている。

②自己の成長を重視すること

やりたい仕事をやるためには、能力が高まらないといけない。その為には、特に若いうちは自己の成長を意識することだ。多くの機会を求め、挑戦を繰り返し、そこから学ぶことだ。コンフォートゾーンを出て、「苦しい」と感じる経験こそ意味がある。

金の卵と、それを生むガチョウのたとえ話がある。若いうちは卵を欲するのではなく、いずれ卵を産んでくれるガチョウを育てることだ。すなわち、それは自分の能力だ。20代、30代のうちに能力を高めておくと、それが市場価値となって後にお金を生むようになる。若いうちは焦らず、能力を高めるべきだ。

ちなみにその能力とは、必ずしも学位や資格といったものだけではない。本当に価値があるのは実務経験で、それはおカネを払っても手に入らない。一定の期間、真に努力した人だけがその経験を手にすることが出来る。

③人のせいにしないこと

ではどういう人が成長するのか。それは自責、つまり「人のせいにしない」人だ。周囲や組織の文句を言っている人は、いつまでたっても成長しない。

何故かと言うと、仕事は周囲との信頼関係で成り立っているからだ。周囲に不満を言っている人は、「一緒に働きたくない人」という風に思われて、人が離れて行ってしまう。その結果、重要な仕事も回ってこないし、チームワークがうまく行かないので良い仕事もできず、成長しない。それでも、自分が成長しないのは周囲に問題があるせいだと思っている。

自責で考える人は、自分の問題は自分で解決するしかないと思っている。仮に組織に問題があっても、それを解決するためには自分がどう動けばよいか?を考える。そういう人こそ、会社はリーダーに抜擢したいと考える。

④言葉だけではなく行動すること

では自責で考える人はどういう人か。それは「行動する」人だ。本当に成長する人というのは、だまって黙々と仕事をしている。

その人を判断したければ「言っていることよりもやっていることを見ろ」という言葉がある。言葉の多い人ほど行動が伴わないことが多い。一方で、ちゃんと行動していれば、それは必ず誰かが見ていて、引き揚げてくれる。そして多くのチャンスを手にする。


社会は「信用」で成り立っている。ある会社での信用を失ってしまうと、その評判は一生付きまとう。インターネットの時代になりそれは一層顕著になってしまった。だからこそ、目の前の人との関係性を大切にしないといけない。

若いうちから信用を積み重ね、そして能力を磨いていくことこそ、長期的に良いキャリアをもたらすと信じている。これは別に日本的なものなわけではなく、世界中のリーダーが同じことを言っている。

「最近の日本ってどう見える?」とフィードバックをもらってみた

先日ヤンゴンシンガポール人とタイ人と飲みながらいろいろ話す中で、「君たちの目からは最近の日本ってどう見えてるの?」と聞いてみた。ちなみに二人とも独立してコンサルタントやファシリテータ―とかをやっているので、恐らくまぁまぁ富裕層。以下がその答え。


「自信を無くしているようにも見えるけど、日本製のものの品質を疑う人は誰もいないよ。そこへの信頼は圧倒的に高いし、みんな日本製のものを買いたいと思っているよ。ただ、日本製が100ドルで、中国製が50ドルだったら、中国製でも良いかな、と思う人は確かにいるのは事実だけど」

(私)「過剰品質、自己満足なんじゃないの?って捉えている日本人もいるみたいなんだけど」

「でも、日本人ほど人を感動させるクオリティを出せる人たちはいないよ。以前日本のホテルに泊まっていたら、エレベーターに乗る人を見送っていて、ドアが閉まるまで礼をしていた。ああいう光景は本当に素晴らしいと思う」

「そうそう、日本には何度でも行きたくなる。もう数えきれないほど行っている。サービスのすべてが素晴らしいよね。そしてみんな親切。今こうして食事をしていても、周りに気を配っているでしょ?そういうことを自然にできるような教育を受けているのは凄い」

「でも皆日本が好きだから、ここ数年は行く先々で観光客ばかりになっていて、若干居心地が悪くなっている。こないだ行った北海道も、中国人しかいなかった。」

という事でした。観光地としての日本の人気は高く、また日本人の精神性もポジティブに捉えてもらえているようでした。過度に自虐的になることなく、正しく自分自身を見つめられるようになりたいものです。

社長は社員に好かれるべきなのか?

答えは「Yes」でもあり「No」でもある。経営者というのは投資家の期待に応えるため、ビジョン実現のために仕事をするべきだ。そういう意味では社員に好かれるのはプロセスに過ぎない。

自分がこれまで見てきた経営者というのはほぼ例外なく社員から文句を言われていた。やれビジョンが無い、考えが古い、コロコロ方針を変える、現場のことが分かっておらず柔軟性が無い、社長は稼ぎが良くてズルい、さんざんな言われようだ。自分も従業員の時は一緒になって社長の文句を言っていたこともあった。経営者というのは例外なく社員から嫌われるものなのかもしれない。

しかし小さいながら組織を持つ立場になって思うのは、社員から経営者というのはどう頑張っても文句に繋がりやすい構造にあるという事だ。

ビジョンが無いのではなく、社員に伝わっていないだけ。伝えているつもりでも伝わってない。そしてせっかく伝わってもすぐ忘れてしまう。考えが古いのではなく、自分の信念に固執しているだけだ。コロコロ方針を変えるのは、環境変化に対応する柔軟な経営をしたいだけだ。現場の事なんて全部把握するより、もっと重要なやるべきことがトップには沢山ある。お金があるなら、自分のポケットに入れるより会社に使いたい。それでも少ない稼ぎで無理して社員におごっていたりする。社長の気持ちなんて社員にはなかなかわからないのだ。

それでもなお、社長が社員に嫌われ過ぎると、社員が辞めてしまって会社の業績が落ちていく。しかるに、社長には社員に好かれ、そしてモチベーションを上げる義務がある。かつて一倉定氏が「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも全部社長のせいだ」といったが、慧眼だと思う。全部を自分で受け止めて、それでも泰然としていられるくらいの器が無ければ、社長なんてやらないほうが良いと思う。

スタッフのパフォーマンスが上がらないのは誰のせいなのか

経営者の仲間と話すと、必ず悩み相談になります。それも大抵は人の話です。事業戦略は自分が頑張れば描けますが、実行段階になると人・組織がついてこないとうまく行きません。しかるに、人の問題で悩んでいない経営者はいないのではないでしょうか。

ある友人経営者はどれだけ人を採用してもうまく行かず、何度もリストラをしてきました。「この人材はきっと活躍するだろう」と思っても、入社してみると期待ほど働かない。経営者としては思い通り働かない苛立ちと、自分が見る目を誤った失望感にさいなまれて、ストレスが溜まります。そしてその苛立ちは当該社員に伝わりますので、ますます当該社員のパフォーマンスは上がらなくなり、悪循環に陥ります。

この状況は一体誰のせいなのでしょうか。

もし応募者が面接で自分を良く見せようと自分を偽り、その結果ポジションを得たもののパフォーマンスが上がらないのでしたら、応募者にも非があります。一方でそれを採用してしまったという点、そしてその後のその人のパフォーマンスを引き出せてないという意味では会社にも非はあるでしょう。

一つ言えるのは、会社が社員の文句を言っていても何も解決されない、という事です。それどころか、社員への不信は伝わっていきますから、よけい事態は悪化してしまいます。人間は、「期待」をエネルギーにして働く生きものです。周囲から信頼されていることこそが頑張る最大のモチベーションです。そこを抜かしてしまって、その社員の改善を期待するというのは、ゴールに対してアプローチが真逆という事になります。

ちろん、期待以下のパフォーマンスの社員を甘やかしてよいとは言っていません。適切な目標と業務のクオリティ基準を定めてそれに足らないようであれば厳しくフィードバックをします。大事な前提としては、「育てる」つもりで、「できるようになると信じて」接しないといけません。(こいつはダメだ)と腹の中で思いながらフィードバックをしてしまっては、本人の成長にはつながらないのです。

日本もアジアも採用難の時代です。100%要望にマッチする人材はいません。ある程度の基準を満たす(または目をかければ満たしそううな)のであれば御の字とすべきかもしれません。会社に害悪を与えている人材は例外ですが、それ以外は「今いる人材をどう生かすか」という視点で組織を見つめなおしてみても良いかもしれません。

リクルートのDNA(4)最終回

人材輩出企業で知られるリクルートの文化の根っこは、当然ながら江副さんの思想によるところが大きい。そして、改めて本書を読むと、江副さんは商売の天才でありながら、決してリーダーとしてはカリスマではなく、それ故に周りの人が生かされ育ってきたような面があると感じます。

私は子供の時からケンカが弱く、他人と競うことを避けてきた。人を統率する力はとても弱い。いつも会社のトップでいる事がつらかった。そのため社員のだれよりも懸命に働こうと、一番に出社、夜は最後に電気を消して鍵をかけ帰っていた。

(社員での結婚式の話)
あるとき、「本日はお招きいただきありがとうございます。えーと、、」とあらかじめ準備した言葉が出てこなかった。思わず私は「昨晩、ご挨拶の準備をして参ったんですが、急に思い出せなくなりまして・・」と言ったら、静まり返っていた会場が笑いの渦となった。以来、自然体で話をするようにした。

私は内気で話し下手。しかし、社員に向けて話をしなくてはならない。そこで、新入社員歓迎社員総会や決算の社員総会の際には、2,3日前から秘書の鶴宏明と、どのような話をするのか骨子を考え、彼が社内の各事業部門を回り面白いエピソードを聞いて来て、会社と各事業部門の話を組み立てた。前日には応接室でリハーサルを行って、当日は聞く人にわからないよう名刺二枚ほどの大きさのメモを社員に見えないように演題の片隅に置きながら、全社あるいは各事業部門のスピーチに臨んでいた。

私は社内に向け、「社は社員同士の付き合いが多くなりがち。視野を広げるために、心がけて社外の人との会食などの機会を持つように」と呼び掛けていた。”外飯・外酒”をといって、お得意先や社外の人との会食を勧め、勉強会や研究会への参加も奨励した。

リクルートやその流れをくむ会社では、コミュニケーションすら「仕組み化」されている。イベントや社内報など、いろんな方法を織り交ぜてコミュニケーションを起こさせる仕組みがデザインされており、ご自身は内気で話下手であっても、そのシステムを通じて組織を活性化させる手腕はやはり経営者として素晴らしい。

リーダーの資質の最も重要なことは「正直さ」なのではないかと思う。決して自分を大きく見せることなく、率直に人と接し、また商売と向き合ってきた江副氏という人物はやはり昭和の日本を代表する稀代の経営者であることは間違いない。

たまたま本棚の奥から出てきて再会した本書でしたが、経営者という立場で読むとまた違った深みがあり、色々な気付きを頂けました。また折に触れて読み返していきたいと思います。

リクルートのDNA―起業家精神とは何か (角川oneテーマ21)

リクルートのDNA―起業家精神とは何か (角川oneテーマ21)

リクルートのDNA(3)

リクルートの創業期の話。まだまだ創業期であるわが社にも通じるものがあり、参考になるとともに身が引き締まる。10年前に読んだ時とは全く異なる部分が響いてくるのが面白い。

事務所は、教育学部の先輩の森稔さんが学生時代に建てた、南佐久間町にある最初の森ビルの屋上の物置小屋を借りた。森ビル発祥の地が、リクルート発祥の地となった。(略)二つしか置けない机と椅子は、古道具屋で買い、リヤカーを借りて運んだ。雨の日は雨漏りがする。

(『企業への招待』(リクルートブックの前身)の初回発行のための300万円のうち50万円が不足し銀行に融資の依頼に行った時の話)
「お貸出しの実績もなく、担保もないお話なので・・・」と、断られた。それでも粘って、「そこを何とか」と私は懇願した。気の毒に思われたのか、浅川さんに「お昼を食べに行こうか」と近くの蕎麦屋に誘われた。(略)「森ビルに事務所を借りた時、保証金をいくら払っているの」「60万円払っています。」
(略)「その保証金を譲渡担保にするとの森さんの承諾書をもらえれば、私が本部と交渉しますよ」私は早速、森さんに頼みに行った。
保証金は、通常ビルを借りている会社が家賃を滞納したときのために差し入れるもの。それが譲渡担保にされることはない。だが、森さんの行為で譲渡担保の承諾書をもらい、司馬信用金庫に持って行った。浅川さんはそれを持って本店の審査部と交渉し、融資が実現した。
この融資が無ければ、『企業への招待』はとん挫していたはずだ。この時の恩義から、私の現役時代、リクルートの営業報告書に記載する取引金融機関一覧の筆頭を司馬信用金庫にしてきた。

(著名なデザイナー亀倉雄策氏に『企業への招待』の表紙のデザインをお願いした時の話)
先生には丁寧に仕事をしていただいた。だが、請求されたデザイン料はわずか10万円。恐る恐る先生に聞いた。「こんなに少なくてよろしいんでしょうか。」先生は言われた。「ちゃんとしたデザイン料は払えないだろう。(略)出世払いでいい。儲かるようになればちゃんとしたデザイン料を請求するよ」と言われ、私は感じ入った。

(『企業への招待』一年目は赤字。二年目も継続するべきか検討した時の話)
『企業への招待』の赤字は、大学新聞の広告の利益で埋めることが出来たが、翌年も出すか否か逡巡した。(略)手元には、お金がない。発行を続けると前渡金がもらえず金策で苦しむかもしれない。(略)迷ったが、これまでの苦労を成果につなげたいという想いが強く、続行することに決めた。翌年は前年度の実績に加え、折からの「岩戸景気」の追い風もあり、(略)掲載者数は倍増した。無料掲載企業が無くなり、予想していた金策の苦労もなく、売上高は四倍増。予想を大きく上回る利益を上げた。

偉大な企業でも必ず裏にこういうストーリーがあります。そして苦労してきた起業家ほど、事業を立ち上げる大変さを知っているので、恩を後に送るという意味で、自分よりも後輩の起業家には見返りを求めず支援する例をよく聞きます。僕もまだまだ苦労のさなかですが、恩を与えてくれている方々への感謝を忘れず、いずれ恩返しを、そして恩を次の世代に送っていきたいと思います。