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中立であること

このところ色んなことがシンクロするので書き留めておきます。「中立であること」について。


先週のシンガポールのワークショップで言われた、ファシリテーターに最も大切なことは「Being Neutral」。徹底的に中立であること。

例えば僕はファシリテーターをしていて、参加者のコメントに対して「Good Idea」とか「I like it」とか言ってしまうのだけど、これはダメなのだとか。良いとか好きとかいうのは、それに対して賛同を示している。ファシリテーターはあくまで中立でなくては行けないので、「Thank you for sharing you idea.」くらいに留めなくては行けない。良かれと思ってついつい相手にGoodとか言ってしまう性格の僕としては、これはなかなか難しいな、と思った。

そして今日は、ベルギーファシリテーターとのミーティング。彼はファシリテーターの育成もしているので、「良いファシリテーターの条件は?」と尋ねてみた。彼は言う。「僕が今まででどうしてもファシリテーターになることをOKできなかった人が一人だけいる。彼はコンサルタントだった。彼は相手に答えを出すことを捨てられなかったからだ。人は答えをもらうと、それを実現させることにコミットできない。ファシリテーターはあくまで相手に答えを見つけさせることにこだわらないといけない」と教えてくれた。ふむ、やっぱり同じこと言うなぁ、と。


確かにこの「中立であること」は僕はどうも苦手だったりします。言い換えると、ポジションを取らないとすっきりしない。以前コンサルタントの先輩から教えてもらった考え方で、「コンサルタントは相手を崖から突き落とすのが仕事だ」という考え方があります。つまり「崖からジャンプすることのメリット」が説明できたとしても、ふつう人は怖くて飛び降りられない。最後に背中を押してあげるところまでできないと相手の意思決定の役に立ったと言えない、という考え方。これは割と印象に残ったので、その後も心に留めています。

今のメンバーには、「It Depends(時と場合による)で終わらないでね」とよく言います。また、Pros and Cons(プラス要因とマイナス要因)を整理するだけでは意味がないよ、とも。整理して論理的に答えを導くことは誰でもできる。すべての意思決定事項は多くの場合はプロコンがあり、それでもどっちがいいのか、という「ポジション」をとらないとお客さんの役に立たないという考え方を基本的には持っています。なので、論理的に整理をした前提で、「自分の意見」「私の好き嫌い」でいいから述べなさい、と言っています。

「赤」と「青」の選択肢があるとしたら、「赤と青のそれぞれのメリットデメリットはこうです」では十分ではない。「あなたへのおすすめは赤です」とか「私だったら青を取ります」とまで言ってはじめてお客様が信頼してくれるし、いい仕事ができるんじゃないか、と思っています。(リクルートでいう(らしい)、「で、お前はどうしたいの?」というやつかもしれません。)


・・・良く考えると、この「中立性への葛藤」はかれこれ20年くらい前から続いています。

指揮を習っていた時に、当時の先生が「オーケストラの指揮というのは黒子だから、究極的には"あれ?指揮者っていたんだっけ"と思われるのが理想だ」と言われて、僕はとても納得がいかなかった記憶があります。もちろんそういう捉え方もできるのは理解できますが、色んな指揮者を見ていると思いっきり自己表現している人もいるように見えるし、音楽に解釈という名の色を付けて観客に届けている指揮者が、どうしても黒子だとは僕は思えなかった、ということをふと思い出します。

中立であることと、ポジションを取ること。この問いが形を変えながら相変わらず僕を襲ってくるのが悩ましく、また面白くもあります。30代にもなってこんな青臭い問いで悩める自分は幸せなのかも、と思ったりもしますが。