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シンガポール独立記念日2014 リーシェンロンスピーチ全文翻訳

8月9日はシンガポール独立記念日でした。

今年はすでにSGを離れてしまっているわけですが、この国の勢いを示すナショナル・デイ(独立記念日)の様子は相変わらず注目しています。中でもリーシェンロンのスピーチは注目しています。東南アジア随一の経済大国を率いるリーダーとして彼のリーダーシップから学べるものがたくさんあり、かれこれ2年くらいウォッチをしています。今年も拙訳ながら、全文翻訳してみます。

昨年のメッセージはこちら → シンガポール独立記念日 リーシェンロンスピーチ(全文翻訳)

ちなみに今年は「移民」という言葉が一切出ませんでした。昨年はちょうど移民問題の最中でしたので、かなり意識したメッセージでしたが、多少の鎮静化がみられたという判断でしょうか。変わって、批判の多いCPF(年金)問題等の社会福祉のメッセージが強まりました。いまや世界有数の高齢化社会シンガポールですので、今後もこの部分への配慮は重要でしょう。また昨年も同じですが「みなで創るシンガポール」というトーンが多く出ていますね。これは長らく独裁と批判されていた反動かもしれませんが、リーシェンロンのソフトなイメージと相まって、比較的浸透している印象があります。全体としては、イケイケの成長国というよりは、福祉重視の成熟国、というトーンのスピーチにますますなってきたなという印象を持ちました。


個人的には、以下のあたりが政治的意図を感じました。

シンガポールの進歩をアピール →成長こそがシンガポールのDNAであるということを再確認
◇先人への感謝 →高齢者への配慮をするとともに、年金施策への批判をけん制
◇国民からのフィードバックへの感謝 →みなでシンガポールを作っている、というメッセージ
◇CPF改革についての言及 →もっとも批判が多い政策ゆえ、ここは来週のRally(方針説明)で詳細を説明
◇労働者への教育や資格取得のアピール →外国人優遇でシンガポール国民の仕事がないことへの配慮


では、以下全文翻訳です。
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私はいまDawsonの近くのAlexandra Park Connectorにいます。この地域はかつては小さな村や沼地でした。今ではこの地域は住宅地、商店、そしてレストランなどがあり、また美しい自然や川、緑とも調和しています。Dawsonはシンガポールが年々いかに成長して生きたかを示す一つの例と言えるでしょう。私たちは暮らしを改善し、よりよい家庭を築き、受け継いだよりもよりよいシンガポールを子供たちに遺そうと努力しています。

これは先人の魂でもあります。彼らはシンガポール第三世界から先進国への引き上げるべき働きました。彼らは協力しあいました。彼らのおかげで今があるのです。彼らにむけたパッケージは「ありがとう」のメッセージでもあります。

私たちはこの精神を新しい時代に受け継がなくてはなりません。世界のグローバル化により勇敢で進取的な人々には多くの機会がもたらされています。一方で人々の間には不安や不確実さも生じています。海外の出来事が我々に与える影響は急速で、また予測不可能です。東南アジアの政況変化や南シナ海の海洋問題、ガザやウクライナ武力衝突の問題などです。

シンガポールも変化をしてきました。我々のほとんどは独立後に生まれた世代となり、先人たちとは全く異なるシンガポールで生まれ育ってきました。我々の意見や利益はますます多様になっています。私たちはここからさらなる高みを目指すべきポジションにいます。ゆえに、今の私たちの立ち位置を再確認し、方向性を見定め、戦略を描きなおすことが大切です。

私たちはMediShieldを通じて、セーフティーネットを見直しました。ボビー・チンの委員会とMinistry of Healthが詳細について検討をしてくれました。多くのシンガポーリアンが仕組みをよくするためのフィードバックをくれました。先月の議会ではすべてのMPがMedishieldの白書に承認をしました。これをうまく実行していなかければなりません。一緒に取り組んでいきましょう。

みなさんの政府は引退後に向けた貯蓄もサポートしています。我々社会は高齢化しており、高齢者をより少ない人数で支えなくてはいけません。老齢期を心穏やかに過ごしたいものです。一生懸命働いた後で、幸せな引退生活が待っていると、安心したいものです。我々シンガポール国民は、老後によく備えておきたいと思っています。より長く働き、多くを蓄えるようになっています。みなさんの多くにとって、HDB(公営住宅)やCPF(年金)は老後に備えるうえで主なものでしょう。HDBはシンガポーリアンにとって家族を築く場所となり、また老後の終の棲家となりました。HDBはシンガポールが栄えるほどより価値の高い資産となります。政府はHDBという資産を通じて富を得るより信頼性高く安定的な方法を検討しています。

HDBのみならずCPF(年金)も老後に備える助けとなっています。老後においても収入を確保するものです。多くの人々にとって機能しているものだと思いますが、改善の余地もあります。来週のナショナルデー・ラリーでご説明する予定です。

強固なセーフティネットは精神の安寧をもたらすだけでなく、自信や勇気をもたらすものです。我々のシステムでみなさんには高い希望を持ってもらいたい。すべての人が家庭環境やバックグラウンドに関係なく、ポテンシャルを開花させるチャンスを手にしてほしい。教育はそれに対する答えの主たるものです。だからこそASPIREを立ち上げました。ASPIREはITE(職業訓練校)やポリテク(高専)の学生の活躍を支援するものです。みなさんは才能にあふれ、情熱と自信を持っています。夢を追い求め、なりたい自分になる資格があります。ITEやポリテクを卒業後も学びを止めてはいけません。政府は継続的な学びを支援します。しかしアカデミックな道を進むことだけが学びの道ではありません。働きながら成長していくことも支援します。働きながら専門スキルを磨き、高等資格を得ることも支援していきます。

自己実現を支援することは、教育や訓練を続けることだけではありません。社会的価値についても目を向ける必要があります。シンガポーリアンは、教育的資格だけで人を判断するのではなく、その人の持つスキルや貢献、また性格なども考慮に入れなくてはいけません。シンガポールがすべての人に希望と機会にあふれた国である理由はここにあります。

学生や社会人のみなさんがどのような道を選ぶにせよ、よりよい仕事を作り出す強い経済が必要です。2014年に経済は3.5%成長し、今年は2.5〜3.5%の成長が予測されています。我々はみなさんの生活を向上するために次の10年もこの水準を維持していきます。

シンガポールには暮らし、働き、そして家族を育む素晴らしい場所があります。ともにこれらをより良いものにしていきましょう。我々はこの国をそして公共空間をより美しいものにするべく活動しています。すべての人が生活を楽しめるような設備を、たとえばスポーツハブやビクトリアシアター、コンサートホールなどを建設しています。Ubin島に見られるような、きれいな水と緑も保護しています。またテクノロジーもフルに駆使して、IT都市、スマート国家作りも進めています。

物理的なインフラだけでなく人々の絆や助け合いの精神も育まなくてはいけません。我々の共通したアイデンティティを強め、価値を育む必要があります。シンガポールはみなで団結してはじめて成功することができるのです。

独立以来ここまで長い道のりを歩んできました。シンガポーリアンは世界のどこに行っても堂々としています。海外からの来訪者はみなシンガポールを訪れその発展ぶりに驚きます。しかしまだ我々は限界に達していません。まだまだ我々ができることはあります。

来年シンガポールは50歳になります。50周年を、SEA Games(東南アジア競技会)を含めて多くのイベントで祝う予定です。多くの方がこの特別な機会を祝うアイデアを提供してくれたことをうれしく思います。この、みなでシンガポールを自分のものとしてとらえる意識が、私たちが前に進んでいく上では欠かせません。

シンガポールがどうなるかは、我々がどうするかにかかっています。変化の時代において我々はとても良い立場にいます。ともに頑張っていきましょう。そして我々すべての明るい未来を作っていきましょう。 ハッピー・ナショナルディ!