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起業、人事、アジア、などなど

自分が人生で感じた奇跡の組織体験(1)

「組織人事」というものを専門とするようになったのは2005年からですので、通算で13年ほどこの業界で仕事をしています。今日は自分はそうした分野に興味を持つようになった、原点っぽい体験を書いてみます。

大学の時、音楽サークルでの体験です。当時僕はクラシックギターを弾いていて、少人数でのアンサンブルや、大人数での合奏をしていたのですが、当時メチャメチャ好きな四重奏の曲がありました。(ちなみにこの曲)作曲したクレンジャンスというフランス人の作曲家はマジで天才で、この四大元素という曲は非常に豊かな情景描写のある美しい曲でした。僕はこの曲に魅せられ、仲間とともに頑張って練習して、コンサートのステージに乗りました。

演奏が始まり、夢中で弾いているうちに曲はハイライトに向かいます。そして事件は起こりました。今でも覚えているんですが、一番熱が入ったところでこれ以上なく美しいハーモニーが生まれて(上記リンクの8:20あたり)、その瞬間、体に電流が走りました。後にも先にもこれ以上美しいハーモニーを味わったことはありません。そして「時間が止まった」ような感覚を覚えたのです。もちろん気のせいだと思うのですが、その一小節だけは時間が長かったような、そんな不思議な感覚です。今でもまだあの光景を覚えています。後でメンバーに聞いても、同じことを感じた、というのです。

それからしばらく、あの時のハーモニーがそれ以降も僕の心から離れませんでした。もう一度あの響きあいを作れたらどれほど素晴らしいだろう、と時々思い出しました。そして大学を卒業し、熱中していたギターも少し演奏する頻度が下がり、その時の感動は薄れていきました。そして大学を出てから7年も経った頃、この感覚が再びよみがえってくる出来事があったのです。(続く)

自分をメチャメチャ叱ってくれた人のことは一生忘れない件

自分のキャリアを思い起こすと、あれが転機になったなー、と思える一つの出来事があります。20代後半くらいに、当時の上司(正確に言うと、上司の上司くらいの偉い方)にめちゃめちゃ怒られた経験です。辛い出来事でしたが、でもそれがあったことで前に進むことが出来たと思っています。

当時私は駆け出しコンサルタントとして仕事をしていましたが、どうもコミュニケーションが得意で無く、よく確認しないで行動して地雷を踏んでしまったり、またビビって仕事をしていて適切なコミュニケーションが取れず、という事が良くありました。結構プレッシャーの強い組織だったので、何をしても怒られるんじゃないか、とおっかなびっくり仕事をしていた時期がありました。

ある時仕事でヘマをしてしまって、それがお客さんとそして社内の双方に迷惑をかけてしまいました。ちょうどその偉い上司が関わっていた案件だったので、その方にカミナリを落とされ、しばらく口がきけない状況が続きました。だんだん会社に行くのもつらくなってきたのですが、ある時その上司の方に改めてちゃんと謝罪する機会を頂きました。

もちろんその上司はまだ怒っていましたが、最後に「ちゃんと反省しろよ!」と一言自分に言ってくれました。自分はその一言でとても救われた気がしたのを覚えています。反省しろ、というのはまだ自分自身に期待してくれているんじゃないか、と思ったからです。とても厳しい方でしたが、深い愛がある方でもありました。本当に自分を見捨てているのであれば、そうやって時間を使って叱ってくれたりはしないでしょう。

そこから勇気を持ってその方と仕事をすることにチャレンジしました。空気を読んで失敗するくらいなら、勇気をもって色々と質問してみよう。思ったことは何でも発言してみよう。そうしているうちに、徐々に自分らしさが出せるようになったのを覚えています。あの時の「ちゃんと反省しろよ!」が僕を救ってくれたのです。

若手のうちは周りが全て敵に見えるようなこともあります。叱られることもあるでしょう。それでも叱ってくれる人は、基本的には良い人です。本当に興味が無ければそんなことにエネルギーを使いません。きっとその奥に期待が隠れています。期待をかけてもらっていると信じて、その叱られたメッセージをきちんと受け止めることで、自分の成長につなげていくことが大切です。叱られて落ち込んでいる暇は無いですし、その必要もありません。

もし周りが敵に見えている若手がいたら、世の中は、会社は、そんなに捨てたもんじゃないと伝えたいです。

「あなたはNew Japaneseですね」と言われた日から世界が変わった件

昨日は懐かしい友人と数年ぶりにバンコクで再会。外資系でマネジャーとして働く彼は、アメリカ赴任なども経てすごく充実したキャリアを送っているように見えた。

話しているうちに、ふと自分がシンガポールに居た時の話になった。当時僕はシンガポールの事業立ち上げ担当としてマーケット開拓に奔走しまくっていて、毎日飛び込みや電話がけなどで人種問わず色んなリレーションを作ろうと頑張っていた。シンガポールのクソ暑い工業団地を汗ダラダラ流しながら営業して回っていたことを今でもよく覚えている。そうこうしているうちに、少しずつ仲の良いシンガポール人ができてきて、またお客さんも掴めてきた。

あるシンガポール人のおじさんが、「長年私は日系企業に勤めてきて、色んな日本人と付き合ってきた。でも君のようにシンガポーリアンとちゃんと関係を作ろうとした人にはあまり出会ったことが無い。あなたはNew Japaneseですね」と言ってくれたことを覚えている。それを聞いて自分は、少し誇らしい気持ちになった。少しでも日本人の良いイメージに貢献できたのかもしれない。その一言が、自分がその後進むべき道を示してくれたような気がしている。自分は日本人の代表として、アジアで勝負していこう。そしてそれがきっと日本のために役立つはずだ。そういうことがスッと腑に落ちたような、そんな瞬間だった。

あれから5年。東南アジアでずっと仕事をしているけど、その思いは変わっていない。遠くから日本を思うと、やはり日本は素晴らしい国だなと思う。人も文化も技術もある。でもその素晴らしさが伝わっていない。感じるセンスのある人にはメチャメチャ刺さっているけど、伝え方が上手いとは言えない。かといって、「日本はクールです」と自分で伝えるのはナンセンス。滲み出しで、自然と感じ取ってもらえる伝え方をしなくてはいけないんじゃないか。自分は、自分自身の在り方や、自分のビジネスの成長によって、結果として日本人は素晴らしい、と思ってもらえれば、と思って仕事をしていきたい、と思っています。

数十時間分の仕事が一気に進んだ瞬間

今週は東京からビジネスパートナーにタイに来ていただいて、あるサービスローンチ案件のMTGをしています。本案件は約1年前から温めてきて、半年前から本格始動。僕も毎月のように日本に帰って、色々なことをすり合わせしてきました。

今回はじめてそのチームにタイに来ていただいてうちのチームとMTGを持ったり、勉強会を開いてもらったりしたのだけど、色んなことが一気に進んだ感触があります。これまで数十時間分かけてきたミーティングと同じくらいの価値が、今日の1日だけにあったような気がします。今後のために、この手のコラボレーションを効率的にすすめるためのポイントをメモしておきます。

1)現場を見る
今回はとにかく顧客を回って話を一緒に聞く時間を過ごしています。今まで顧客ニーズは僕の口から何度も説明してきました。でも百聞は一見に如かず。ダイレクトにマーケットを見て、顧客に会ってもらう事のパワーは計り知れません。

2)一緒に固まりの時間を過ごす
例えば合計10時間でも、1時間を10回と、10時間を1回では、深まり方が違います。後者の方が関係性や思考の深まりが得られる気がします。以前、別のポストで一緒に出張することのチームビルディング効果を書きましたが、それと似たように感じます。

3)チームに混ぜてしまう
コラボレーションのきっかけは社長の僕ですが、実務に当たってはうちのチームと進めて行きます。ゆえに、メンバーと直接やり取りをしてもらうことで、その後の業務が進めやすくなるし、またメンバーのモチベーションにも好影響を与える気がします。

というわけで、クロスボーダーコラボレーションを今後もどんどん進めますが、色々と学びの深い案件となっています。一つのプロジェクトを立ち上げるのには2年はかかる、というのがこれまでの経験則ですが、少しでもスピードを上げられるように、この学びを生かしていきたいと思います。

薬を使って病気を治すことへの考え方の違い

週末体調をがっつり崩しまして、たぶん胃腸風邪だと思うのですが、寝込んでおりました。妻の弟夫妻がタイに来ていたので、せめて食事くらいはご一緒したく、薬を使って何とか熱を押さえてアテンドしました。 熱が出た時に、タイはじめアジア諸国で最もポピュラーなのは「パナドール」ではないでしょうか。

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このパナドール、日本では認可されていないのですが、とにかくめっちゃ効きます。昨日も飲んで2時間くらいで熱も下がり、だるさも取れました。恐ろしい効き目です。とはいえ、これは薬で症状を押さえているだけなので、時間が経てばまた症状が復活してきます。あくまで解熱鎮痛剤、というわけです。困ったときはこれが助かります。

日本人は「内側から治す」的な信奉があるので、この「薬で症状を抑える」という考え方ってあまり好まない人が多いですよね?でもこれって海外の病院にかかったりすると、考え方の違いに驚かされます。

以前シンガポールの病院に子供を始めて連れて行ったときに、待合室で、「とりあえず解熱剤を飲め」と言われて驚きました。解熱剤を使ってしまうと治りが遅くなってしまうというのが日本の常識なので、「治りが遅くなるのでイヤだ」というと、不思議な顔をされました。割と海外暮らし初期の経験だったので、考え方の違いに驚いた記憶があります。タイの病院でも同様の経験があります。

とりあえず熱は下げたほうがラクになっていいだろう、という考え方で、良かれと思って出してくれるわけですが。薬一つとっても文化の違いがありますね。

会社を辞めていく社員を愛し続けることが出来るか

先日スタッフと話していて、「フラットに見てうちの会社は若い人が多いから、みんな3年くらいの周期で辞めていく可能性はあると思うよ」という事を言っている人が居ました。少し寂しい気もしますが、優秀な人がキャリアを積んでいく上で、他の場所に行って異なる経験を重ねたくなるのは世の中の常だと思いますから、その可能性は否定できないでしょう。

実際僕自身も、3~5年くらいの間に転職をしてきたわけなので、その場所で十分やり切ったうえでの転職なら価値があると思っています。しかもタイなら1年~2年が普通なので、3年居てくれればよいほうかもしれません。スタッフがいずれは入れ替わる可能性も想定しつつ、それでもなるべく長くいてもらえるように最大限マネジメントの努力をする、というのがどんな会社の経営者にも必要な態度だと思います。

いつも思うのですが、「辞めた後の成功を願えるかどうか」が会社の器、経営者の器、だと思います。すごく下世話な例えをしてしまえば、別れた彼女に対して、「あいつなんて不幸になれば良い」と思うのか、「自分とは別れたけど誰かと幸せになってほしい」と思えるのか。それも男の器だと思いますが、似たような話です。

何の因果か、その従業員は、世界にあまたある会社の中で自社を選んでくれて、たまた数年間、時間を投資してくれたわけです。それだけで奇跡的なことです。会社に害をもたらす悪人でない限りは、会社が持つべき感情はまずは感謝ではないでしょうか。

そして辞めた後の成功を願うのであれば、その会社にいるうちに「その人がキャリアで成功するために必要なサポート」をしてあげるべきでしょう。辞めた後のことまで心配してやるなんて何てお人好しな、と思うかもしれませんが、優秀な人ほど、社外に出た後も自社に色々な形で貢献を返してくれます。何より、その人が活躍することは、会社のレピュテーション上、絶対にプラスです。マッキンゼーリクルートなど、人材輩出企業として知られる会社は離職者を大切に扱っています。ああいう会社を見ていると、人材を輩出することで良い人材がより入ってくるようになる循環を作ることの重要さを感じます

こういう文章を書いているのは、社員との関係に色々と日々思うことがあるからなので、僕自身がそこまでの懐の深さが身についているのかどうかわかりません。それでも、少しでも器の大きな経営者になっていけるよう、修行していく以外にありません。

普段とは違う立場を経験することによる気付きのインパクトは非常に大きい件

今度、社内で一日のオフサイトミーティングを実施する予定で準備をしています。普段はそういうものを企画して顧客に提供する側なのですが、今回はあえて外部のファシリテーターに課題をヒアリングしてもらい、セッションをデザイン、進行してもらうことにしました。

先日ヒアリングに来てもらったのですが、今のところこれがなかなか新鮮で、新しい視点をもらえています。特に社長と社員という関係性に第三者という新たな関係性が加わることで、普段言わないような話をみんなするようになります。我々が出しているバリューの一部がまさにそれなのですが、出している側は意外とそのバリューを実感できません。こういう学びは普段の仕事からは得られない気がします。

こういう「視点の入れ替え」という手段は、学びを生み出す有効な手段です。10年ほど前に私の妻が妊娠した時は、地域のコミュニティルームにこれからパパになる人が集められて、「妊婦の気持ちを体験する講座」というのが受講しました。重いオモリを体にまとって日常生活の動作を取ってみるのですが、妊婦として生活するのが以下に不便かを体験する、、、というあれです。ベビーカーを押して街中を歩いてみる、という体験講座もありますよね。「子供を産み育てるってこんなに大変なのか!」と男性にショックとともに気づかせる、有効な手法だと思いました。

企業のトレーニングでは、上司に部下の立場を体験させるワークなんかは色々なところで行われています。普段指示の「出し手」の人たちに、逆に指示の「受け手」になってもらうことで、わかりやすい指示とはなにかを理解させる手法です。ものを売る人であれば買い手を経験させる。接客する人であれば、接客されてみる。こうした立場の入れ替えは、「固定化」した視点を新たなものにさせる有効な学習方法です。

さて、そう考えると、我々経営者が学び続けていくためにはどうしたらよいのでしょうか。トップリーダーというのは「部下はいるけど上司がいない」という立場なので、ラクですが視点が固定化しやすいなと感じます。自分の会社とは別に何かの団体で、誰かリーダーのもとで活動をしてみるというのも良いかもしれません。また、いくつになっても、どれだけ偉くなっても、メンターと呼べるような人を持ち、学び続けていくというのも重要と思います。常に自分の視点が固定化していないか?気を付けたいと思います。