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個人面談から感じたこと


今日は3か月に1度の個人面談の日。出来る限り一人一人とじっくりとやります。

タイの若者、特に成長志向の強い人にとっては「1年」というのはとても長く感じるのではという理由で、弊社では評価サイクルを年に4回としているのですが、面談の頻度を増やすのはある意味でリスクでもあるので、上司としてはなかなか緊張感が高いものがあります。

「3年後どうなっていたいか?それにつながる仕事を今できているか?」をまず最初に話します。一人一人のキャリアにつながる仕事を提供できないのであれば、この会社でわざわざ働く意味は無いわけで、そういう仕事をいかに作るかを考えることは、会社にとってもまた本人にとっても今の仕事を見直す良い機会になります。

弊社には「3年後にはビジネスオーナーになっていたい」という社員が多いです。(タイは家が自営業の子が多いので、比較的、自分も事業を始めることを前提に考えている人が多い気がします)。ゆえに、おそらく3年後にはみんなこの会社にいないのではと真面目に思っています。寂しくも感じますし、また3年後どうなってしまうのかと不安でもありますが、そういう社会を前提として会社を経営していく必要がある、と切り替えています。昇給幅や昇給ルールもその前提で柔軟に運用します。

若手が3年後に独立できるだけの実力をつけて飛び立ってくれればそれはそれでWIN-WINだと思います。ですが理想としては、それ以上の期間いる価値のある会社だったと判断してもらえるよう、事業を伸ばし、魅力ある仕事をどんどん増やしていかないといけないな、ということを今日の面談から痛感させられました。

こうしたプロセスから一番勉強になっているのは自分ですね。

Randomnessの大切さ


最近意識してるのは「Randomness」ということ。ランダムさ、いいかげんさ、予定調和からの逸脱、といったこと。

タイで働いていると、日本ほどはみんな計画的に仕事をしないので、いろんなランダムさがある。

今日いきなり会えるかとか、突然打ち合わせが始まるとか、彼女も連れてっていいか、とか(笑) 先日得意先のパーティーに行ったけど、家族や親戚が参加してたり、日本のビジネス慣習ではあまり考えられない風景だった。要するに、時間や場所を共有することにすごく「おおらか」。これは別にタイに限らず、東南アジアの人は割と近い印象がある。いわゆる南国気質。計画を立てるよりは、今を楽しく生きるのが上手な人たち。(もちろん全員がそうと言っているのではなく、日本人と比べればそういう人が多い、ということです)

日本人からすると、仕事に関する予定についてこうしたランダムさは結構ストレスに感じることが多い。「あらかじめ時間を抑えてくれよ」とか「呼んでない人がいきなり来ても困る」「こっちにも計画があるんだから」とか違和感を感じてしまうのだけど、最近はそういうことを言わないようにしている。慣れてきて感じなくなったということもあるんだけど。

よくよく振り返ると、ランダムさのマイナス効果はあまり大きくなく、ほとんどがプラスの影響ばかりだったりする。新しい人がいることで違った視点が入ったり、予定外の打ち合わせだったけど、今日あの話ができて良かったな、とおもったことのほうが多い。「予定が狂う」ことのデメリットは自分がストレスに感じることくらいで、予定にランダムさを許容したほうが新しい発見が多い。

これは「イノベーションには遊びが大事だ」といった文脈と似ているなと思う。決められたインプットからは決められたアウトプットしか出ない。イノベーションとは「新しい結びつき」なので、想定外の材料をごちゃまぜにして、さぁ何が起こるか、と見てみるほうが楽しい。偶発的な出会い、という意味ではセレンディピティという言葉で表してもいいかもしれない。

あまりランダムすぎると日本人や日系企業と仕事ができなくなるので危険ですが(笑)、適度なrandomnessを楽しみながら仕事をしていったほうが楽しいし、アウトプットも出るんではなかろうか、というのが最近のマイブーム。

「お金持ちになりたい」という若者

タイの若者は、お金持ちになりたい欲求が強い子が多いですね。「30歳までにミリオネアになる」と言う子もいます。(うちの社員とか。) その野心は素晴らしく、日本人が見習ってほしいくらい。

ただそういう価値観に対して「お金だけをゴールにすべきではない」というのが僕がいつも言っていること。

お金は目的ではなくて、手段。だってお金は使うためにあるわけだから。(札束を家において眺めたい、という人は除く)

であればその先にある、得たいものは何か。名誉なのか安心なのか、家族の幸せなのか。それらをゴールにしない限り満たされることはない、ということを認識しておくべきだと思います。お金だけを手に入れても決して幸せになれないことは色々な成功者の証言が証明しています。

また、企業のビジョンとかを作る仕事の立場からすると、こうした物質的な欲求というのは多くの人を動かすうえでは直接的過ぎて機能しづらい、という側面もあります。そうした人の心が本当に動くメカニズムも併せて伝えたい。

念の為ですが、お金が大切ではないとは言いません。でも、特にリーダーになろうとする人は、必ずしもお金で人が満たせるわけではない、ということは知識として知っておいたほうがいいと思います。

・・・とはいえ、こうした価値観に訴えるのは簡単ではありません。例えば名言を引用しながらあの手この手で伝えます。
Try not to become a man of success, but rather try to become a man of value - Einstein (成功者を目指すより、価値ある人になろうとせよ -アインシュタイン) とか。

・・・まぁ僕がお金持ちになってから言えたら、もっと説得力が出るのかもしれませんが(笑)

自分に自信を持つために


先日、たくさんの学生さんと話してて「自分に自信が無い」と相談してくれる人がとても多かった。学生の時なんてそんなものかもよ、とも思いつつ、とはいえどうしたら良いのか考えてみる。

まず長所と短所は表裏一体だから、何かしらの良いところはあるはずだと思って探してみることは大事。度胸が無いと思ってる人はとても思慮深い人かもしれないし、頭が悪いと思ってる人は感性が強いのかもしれない。自分の弱さを逆から光を当ててみた時に何が見えるか。そしてそれを人に聞いてみる。意外と悪くない自分が見えてくるかもしれない。

そしてやはり自信つけるために大切なのは、何かに打ち込むことなんじゃないだろうか。バイトでもサークルでも何でもいいんだけど。少なくともこれは自分は一生懸命やった、と言えるものを作る、そしてそこから感じたことをどんどん言葉にしてみることを繰り返す。自信を持つとは「信じる対象となる何かを作る」ことだとも言える。打ち込んだ結果、努力の大切さ、友達の大切さ、など、自分が大切にしたい何かが見えてきたら、それが自分を支えてくれる。それは自信に似たものだと思う。

少なくとも自分はまだまだダメだ、と思えるだけの成長欲求があるのは素晴らしいと思うし、悩んだ人はその後は確信が待ってるので、悩んでる自分自体をまずは肯定することから始めたらどうだろうか。

採用する側 or 採用される側


今回の日本滞在は、日本人の候補者の採用面接という目的もありまして、いくつか面接をこなしています。普通に考えれば東南アジアのよくわからないベンチャーに日本の優秀な方がわざわざ入社してくれることは相当ありえないことであり、どうやったら弊社に魅力を感じてもらえるか・・・と正直緊張しています。

つまり、面接するというよりは「面接される側」の気分に近くて、自社のビジョンや仕事内容の説明などちゃんと準備して望まないと・・という思いです。ただふと思うと、これは別に日本だからというわけではなく普段のタイでの採用もそういう気持ちで本来臨むべきですね。にもかかわらず、タイでの面接では、ついその場の流れで自社説明とかしてしまったり、手抜きの採用面接も正直多かったな・・・と反省。それによって取り逃がした人材もいたかもしれません。

自社を魅力的に見せるのは経営者の仕事としてとても大切なわけで、いつ何時気を抜いてもいけないですね。こういう客観視によるふとした気づきがあるのも、出張の良いところだなと思ったりします

人材採用は「一点豪華主義」で。

先日の起業一年の感想にめちゃめちゃ反響を頂き驚いてますが・・・。今回はその中でも特に大切な人材採用についての考えを書いておきます。

弊社はいま5人のチームですが、できればあと2人採用したいので毎週2,3人と面接をしています。タイでの採用は正直言って難しいです。英語の面接で人間性を見抜くのが難しいというのはありますが、そもそもの就労感がかなり違いますし、また売り手市場なので、満足のいく人材に出会える確率は正直言って高くありません。ゆえに、とにかく妥協せずにどんどん会い続ける(結果一つのポジションを採るのに1年以上かかることも)か、またはある程度の妥協をしながら人材を入れていくのか、で悩むことになります。この辺はタイでマネジメントしている多くの人と共通する悩みじゃないでしょうか。

僕が意識しているのは、採用は「一点豪華主義」で行くべき、ということです。つまり、全てを満たす人はどうせ見つからないので、何か飛びぬけた能力を持った人を採用しようということです。

例えば弊社の採用基準は

・人間性が自社の価値観とマッチしている
・人事領域の知見がある
・英語が堪能である
・リーダーシップがある
ロジカルシンキングに長けている
・プレゼンテーションがうまい
タイ語ができる
・・・

などを挙げていますが、全てを満たす人にはまず存在しません。じゃあどうするかというと、全部「そこそこ」の人を採るのではなく、「どこかに特別に秀でている人を採ろう」というのが「一点豪華主義」の考え方です。ちなみに「特別に秀でている」の定義は、「チームの誰よりもできる」ことであり、さらに言えば「社長である僕よりもできる」ことです。

今の弊社のチームは、
「僕よりも英語がめちゃめちゃできる人」
「僕よりもプレゼンがめちゃめちゃうまい人」
「僕よりもロジカルシンキングが出来る人」
などで構成されています。

この考え方のメリットは、

1.本人の活躍の場が作れるので、自尊心、モチベーションの維持になる。
2.チームメンバー同士のリスペクトが作れる。スタッフというのは必ず揉めたりするものですが、その中でも「彼はあそこはスゴイ」というものが一つでもあれば、相互の信頼関係のよりどころになります。
3.組織全体のレベルが上がる。別々の分やに秀でた人をたくさん集めれば、そのナレッジがシェアされれば組織全体のレベルが上がります。これは「自分自身のレベルを上げ続ける」ことが仕事の社長にとっても非常に大きなメリットがあります。

これはドラクエのパーティーの作り方とも似てますね。勇者である社長は、全部知ってなくてはいけない反面、全部そこそこのある意味「何にも秀でていない」存在です。その周りに、戦士や魔法使いなどの特別秀でた人を集めてパーティーを強くしていくわけなので、何か長所を持ってくれているからこそパーティーでの存在価値があるわけですね。

ちなみにこの「一点豪華主義」というのは、もともとは「ちきりんさん」のブログから取った考え方です。

「一点豪華基準で行こう!」
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20081001

マンション選びや仕事選びなど、人生にとって大切なものは「すべてを満たそう」とするのではなく、とにかく一点秀でているものを選ぶ。この考え方は企業の人材採用でも大事だなぁと思っています。

なお最後になりますが、採用基準の一番目に挙げた「価値観のフィット」については、ここは妥協をしてはいけません。
価値観とは会社の根幹をなすものであり、ここがずれてしまうとほかのどんな要素を持ってカバーできません。また、価値観が合わない人を採用した場合の悪影響は計り知れません。
[共通した価値観」と「別々の強み」を備えた人を探して行く、というのが基本的な考え方だと思います。これはそもそも「それぞれの人にそれぞれのアイデンティティがある」という弊社の理念でもあるわけですが。

※弊社、絶賛人材募集中ですので、興味ある方はお気軽に連絡ください!(笑)
nakamura@a-identity.asia

起業して一年たって感じたことのまとめ

先週でタイで起業してから一年が経ちました。一年前に「これから最高の人生が始まりますよ」と言葉を掛けてくれた人がいましたが、振り返ってみるとまさにそうでした。人間というのは大変であればあるほど、そこに充実感を見出すんだなぁということが身を持ってよくわかりました。まだ歩き始めたばかりですが、一方でとても色々な学びがあった一年だったので、感じたこと・学んだことをつらつらとまとめておきます。乱文ですがお許しを。

まず大切なのは理念。起業すると「何をしたいの?」を人に説明し続ける日々が始まります。その際に僕が大切だと感じていたのは「社名」です。僕が「アジアの多様性を生かした経営をサポートする」という想いでつけた社名が「Asian Identity」。実はこの1年、この社名に何度助けられたかわかりません。社名の説明をすれば僕のやりたいことが伝わるので、スタッフ採用や顧客へのプレゼンにもとても役立ちました。理念を詰め込んだ社名は有効なブランディングツールになることを学びました。タイのパートナーから「社名を聞いてピンときた。一緒に働きたい」と連絡がきたこともあります。こうした学びは、クライアントへのコンサルティングに非常に生きていて、理念をしっかり言葉にすることがいかにビジネスをする上で大切かをお伝えしながら、プロジェクトをしています。

次に大事なのがお金。この一年、頭の中の8割以上はお金のことが支配する日々でした。「スタッフの給料を払い続けられるだろうか」「ところで我が家の半年後の幼稚園の費用は払えるんだっけ」とかそんな心配ばかりしていました。「忙しくて・・」という理由で飲みの誘いを断ったけど本当はお金がなかった(使いたくなかった)から、という頃もありました(ごめんなさい)。 お金について色々と考え出すと時々ヤバイ気持ちになりましたが、なんかそういう感覚も途中からマヒしてきたので、あぁ人間ってのは色んな事に慣れてくんだなと思いました。(今は一応飲みに行けるようになりました)

またお金については、起業の時に頂いた「資本政策は後戻りできないですよ」というアドバイスが最も役立っています。僕の場合は資本構成自体は100%で始めましたが、これが本当に良かったと思っています。日々の意思決定が迅速にできますし、少し思い切った攻めの投資も躊躇なくできました。結果、スピーディーでアグレッシブな経営が多少はできてきた気がします。もちろん、資本政策はビジネスモデルと相談しながら柔軟に考える必要があることは言うまでもないですが。

次に戦略。当初、自社のポジショニングや競争戦略など紙の上で色々と考えましたが、結局は「やってみないとわからない」ことばかりだと思いました。「戦略=やらないことを決めること」と経営の教科書には書いているので、自分なりに「やらないこと」を決めてやってきましたが、一年の間で何度かそれを自分なりに納得した上で破りました。美しい戦略を追及するよりも、生きていくためには必死で色々なオプションを試し、それを高速回転でPDCAを回すほうが、少なくともスタートアップの経営としては正しいような気が今はしています。もちろん「やってみる」ためには色んなリソースが必要で、特に「時間」が一番大切です。時間を確保するためには、どんどん人の手を借りるしかありません。とにかく「助けてください!」と色んな人の手を借りまくった一年でしたが、こうした「お願い」をたいていの人が前向きに聞いてくれるのも、大企業の時にはなかったスタートアップの醍醐味でした。(お世話になったみなさん、感謝です。恩返しできるように頑張ります。)

そして人材。この1年は、特にフルタイムのタイ人スタッフに救われました。少ないながらも優秀なスタッフが雇えたことから、「スタートアップの採用は実はとても有利」だということを学びました。優秀層の中に一定の割合でスタートアップに興味のある人はいます。そうした層に、自社のビジョンを思いっきり語れば、一定の割合でジョインしてくれるということを学びました。もちろんそうした層は非常に意識が高いので、彼らの人生にとってこの場の経験がどんな意味があるのか、を常に語っていくことが大切です。加えて採用する「順番」も大切だということを学びました。弊社の場合は最初に"魔法使い"的な器用なスタッフが入社してくれたので、彼と一緒に世界観やサービスを試行錯誤しながら一気に整え、そのあとに"戦士"的なスタッフを入れてプロジェクトをガンガン回していきました。採用する順番が逆だったらこうはいかなかっただろうなーと今振り返ると思います。

最後に自分自身のマネジメントについて。まず時間の効率がめちゃくちゃ上がりました。上記の「やってみる」ことをガンガン進めるには、とにかく悩んだり迷ったり時間をなくすことにしました。幸い、今は意思決定を全部自分で出来てしまうので、たいていのことは数秒で決めます。ただこれは負の側面もあって、後から考えれば「もっと人に相談すれば良かった」「軽々に決めるべきでなかった」と反省した意思決定もたくさんありますので、決めれば良いというものでもない、ということも学びました。いずれにしても時間当たりのアウトプット量はサラリーマン時代に比べると3倍〜5倍くらいになった気がします。

結果として、プライベートに時間を回せるようになりました。「スタートアップ=死ぬほど働く」というイメージを持っていましたが、僕の場合はそれだと多分持たないことが想像できていたし、またワガママを言って海外に来てもらっている家族のためにも、その辺のバランスはなるべく取ろうと思いました。毎日18時か19時には仕事を切り上げ、なるべく子供に勉強を教えたりするようにしていますし、毎朝学校に子供を送るのが日々の楽しみになっています。ただ色んな起業家のブログを読むと「投入時間量を増やす」というのは会社を大きくしていく上では避けて通れないと思いますし、これから色々なチャレンジが待っていることは明らかなので、いかにメリハリをつけて日々をデザインできるか、を毎日考えています。

ということで、引き続き頑張ります。たまにはこうした起業日記もまた書いていこうかなと思います。

※あ、弊社人材を募集中ですので、もしご興味頂ける日本人の方いらっしゃいましたらお気軽に連絡ください!
nakamura@a-identity.asia