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秀逸だった安倍首相によるオリンピック招致プレゼン(英語)

東京オリンピック開催決定、おめでとうございます!

日本チームのプレゼンが秀逸だったと話題になっていますが、英語学習の観点でも参考になるものでした。

実は、英語初級者〜中級者の英語上達の秘訣に「しっかりした英語を話す”日本人”を参考にする」というものがあると思っています。ネイティブの英語は普通の人が目指すにはやや遠いゴールですが、日本人であれば自分の上達のイメージの具体的な参考になるからです。そういう意味では、こういった「日本人が世界で話している」素材は格好の学習教材です。

さて、話題の安倍さんのスピーチですが、決してネイティブのように流暢ではない英語ではあるものの、しっかりと印象に残るプレゼンとなっています。

http://www.youtube.com/watch?v=zf90ImlFDuU

すでに言われている通り、冒頭で「フクシマ」に触れることで聴衆の不安を打ち消した、という点はもちろんあったと思います。しかしそれ以外に、私が安倍さんの英語スピーチで優れていると思った点がいくつもありました。

1.要所でパワフルな言い回しを使っている

・tremendous honour(この上ない光栄)
・true believer(真の信奉者)
・a new, powerful booster for the Olympic movement (オリンピック運動への新たな、力強い推進力)
・a nation that is a passionate, proud (情熱的で、自信にあふれた国)
・We are ready to work with you. (皆さんと働く準備が既にできています)

・・など、要所でパワーがこもる言い回しをうまく使っています。また、安倍首相の自信のこもった語り口と表現がよく合っています。


2.首相のパーソナルストーリーを入れることで親近感を出し、また状況描写をしたストーリーテリングで情緒に訴えかけた。

"Several thousand doves, all set free at once. High up in the deep blue sky, five jet planes making the Olympic rings. All amazing to me, only 10 years old."
(数千もの鳩が、一斉に放たれます。真っ青な空に高く舞い上がり、5機のジェット機が五輪を描くのです。10歳の私には驚くべき光景でした)

といった部分。体言止めを使ったり、短い不完全文をつないでいくことで、臨場感を出しています。こういう言い回しは聴衆をぐっと引きつけます。

3.一つ一つの単語を丁寧に発音している
4.ボディーランゲージや表情の使い方に安定感がある

上記2点、すなわちデリバリー面に関する点は動画を見ていただければと思います。ゆっくりはっきり発音すればこれだけ伝わる、というのは参考になる部分も多いと思います。また、今回の日本のプレゼンターのノンバーバル(非言語)コミュニケーション能力は、みな素晴らしかったですね。日本人はこれくらい大げさにアクションしながら話すくらいがちょうどよいのでしょう。


***以下全文。日本語は拙訳にて。***

Mister President, distinguished members of the IOC... It would be a tremendous honour for us to host the Games in 2020 in Tokyo – one of the safest cities in the world, now... and in 2020.

委員長、ならびにIOC委員の皆様。2020年に東京でオリンピックを開催できることは、この上なく光栄です。東京は世界で最も安全な都市であり、それは現在、そして2020年も同様です。

Some may have concerns about Fukushima. Let me assure you,
the situation is under control. It has never done and will never do any damage to Tokyo. I can also say that, from a new stadium that will look like no other to confirmed financing, Tokyo 2020 will offer guaranteed delivery.

フクシマの事を心配される方もいらっしゃるでしょう。ご安心ください。状況は制御されています。東京への影響はこれまでになく、またこれからもありません。さらに申し上げます。他にはない新しいスタジアムから、すでに確保された財政まで、東京オリンピックは確実な実行を保証します。

I am here today with a message that is even more important. We in Japan are true believers in the Olympic Movement. I, myself, am just one example.

私は今日ここで、より重要なメッセージをお伝えしたいと思います。私たち日本人はオリンピック運動を真に信奉するものだということです。そして私自身がその一人です。

When I entered college in 1973, I began practicing archery. Can you guess why? The year before, in Munich, archery returned as an Olympic event after a long time.

私が1973年に大学に入ったとき、アーチェリーの練習を始めたのです。みなさん、なぜだか分りますか?その前年、ミュンヘンオリンピックでアーチェリー競技が五輪に復活したからです。

My love of the Olympic Games was already well-established. When I close my eyes vivid scenes from the Opening Ceremony in Tokyo in 1964 come back to me. Several t¥housand doves, all set free at once. High up in the deep blue sky, five jet planes making the Olympic rings. All amazing to me, only 10 years old.

私のオリンピックへの愛はそのころから既に確固たるものです。目を閉じれば、1964年の東京オリンピックの開会式のシーンが鮮やかに蘇ります。数千もの鳩が、一斉に放たれます。真っ青な空に高く舞い上がり、5機のジェット機が五輪を描くのです。10歳の私には驚くべき光景でした。

We in Japan learned that sports connect the world. And sports give an equal chance to everyone. The Olympic spirit also taught us that legacy is not just about buildings, not even about national projects. It is about global vision and investment in people.

我々日本人は学びました。スポーツは世界をつなぐということを。そしてスポーツはすべての人に平等のチャンスを与えます。オリンピック精神はこうも教えてくれます。オリンピックが遺すものは、建築物だけではなく、またさまざまな国家プロジェクトだけでもない。それは世界的なビジョンを持つこと、そして人間に投資することなんだと。

So, the very next year, Japan made a volunteer organization and began spreading the message of sports far and wide. Young Japanese, as many as three thousand, have worked as sports instructors in over 80 countries to date. And they have touched the hearts of well over a million people through their work.

そして、その翌年から、日本はボランティア組織を創り、スポーツのメッセージを世界に広く、遠くへ伝えることを始めました。3000人もの若き日本人が、80カ国にもわたりスポーツインストラクターとして仕事をしてきました。今日まで彼らは百万人以上の方々の心に触れてきました。

Distinguished members of the IOC, I say that choosing Tokyo 2020 means choosing a new, powerful booster for the Olympic Movement.

IOC委員の皆様、東京を選ぶことはオリンピック精神に新しい、パワフルな推進力を与えることを選ぶということです。

Under our new plan, "Sport for Tomorrow," young Japanese will go out into the world in even larger numbers. They will help build schools, bring in equipment, and create sports education programs. And by the time the Olympic torch reaches Tokyo in 2020, they will bring the joy of sports directly to ten million people in over one hundred countries.

我々の新しいプラン、”Sports for Tomorrow"ではより多くの若き日本人が世界に出ていきます。学校を創ることを手助けするでしょう。設備を提供するでしょう。新たなスポーツ教育を創りだすでしょう。そして聖火が2020年の東京に届くまでには、100以上の国々で、1000万人以上の人々に、スポーツの楽しさを直接届けるでしょう。

Choose Tokyo today and you choose a nation that is a passionate,
proud, and a strong believer in the Olympic Movement. And which strongly desires to work together with the IOC in order to make the world a better place through the power of sport.

きょう、東京を選ぶということ。それは情熱を持ち、自信にあふれ、オリンピック運動の強い信奉者を選ぶ、ということです。そしてIOCとともに、スポーツの力で世界をよりよいものにしようとしている国を選ぶということなのです。

We are ready to work with you. Thank you very much.
我々は皆様とともに働く準備があります。ありがとうございました。

以上