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新しいリーダー開発の潮流について

自分の周りには能力も想いも備えた20代、30代のリーダーがたくさんいるが、自分はこの新世代のリーダーたちがどんな経験でリーダーシップを磨いているのかに最近とても興味がある。

最近知り合った、政治家を志す素晴らしいリーダーがいる。彼は海外で勉強した期間が人より長いため日本の新卒プロセスに乗れず、本当に追い込まれた経験が今に生きている、と言っていた。また彼の別の知人も会社を辞めてフルコミッションの仕事を始め個人事業主のような働き方をし、ほとんど貯金が底をつきそうになった経験をバネにして今は大活躍をしているそうだ。二人とも素晴らしいビジョンを掲げ、多くの人をすでに巻き込んでいる立派なリーダーだ。

時代によってリーダーの生まれ方は違う、と感じる。20代〜30代のビジネスパーソンは、大企業にいればまだまだ「若手」などと呼ばれてしまう年代だ。むしろ、この世代は大きな会社に属さずとも自らビジョンを掲げ、広く仲間を集め、社会に価値を還元している人が多い。そしてその過程を通じてリーダーとして成長していっている。


この新しいリーダー開発のプロセスは2つの背景があると思う。一つは、「経済の低成長」だ。

バブル世代以上のリーダーの成長は基本的にはカイシャの成長と共にあった。リーダー開発の研究では「海外赴任」「部門立上げ」「​部下を持つ経験」等がリーダーの成長要因として挙げられるが、そんなチャレンジの中で逞しく自分を磨いてきたリーダー達が今の日本を牽引している。

一方、70年代後半生まれ以降の「ロストジェネレーション」などと呼ばれる世代は、基本的には経済成長を知らない。そんな低成長時代の中にあって、カイシャでのチャレンジ経験の機会が相対的に低下している。また、人材市場の流動化や正社員ポストの削減により、様々なキャリアの選択可能性が(良くも悪くも)増している。結果として、「大企業からの脱出」「ベンチャー起業」「社会貢献活動」「海外武者修行」等がチャレンジ機会となってきているのが昨今の20-30代リーダーだ。

チャレンジにおいて大切な考え方を「リーダーシップの旅」から引用すると「後ろのドアを閉じないと前のドアは開かない」というものがある。つまり退路を立たないと本当のチャレンジにはならない、ということだ。新しい時代のリーダー達が退路を絶った挑戦をしている(せざるを得ない)のは、皮肉な話ではあるが低成長時代の一つの恩恵と言える。


もう一つは、「インターネットの存在」だ。

20代〜30代リーダーはソーシャルメディアで仲間を集め、ブログでビジョンを発信する。これはもはや当たり前の行動だが、これは実はリーダーシップ開発とも大いに関連がある。

人の成長を研究した「経験学習」の理論によれば、経験とは「人間と外部環境との相互作用」である。経験には「直接経験」(自分自身の経験)と「間接経験」(情報を通じた他人の経験)がある。また、もう一つの軸として「外的経験」(客観的に触れる)と「内的経験」(経験を主観的に解釈する)がある。

インターネット、とりわけブログやソーシャルメディアは、自分が共感する他者の「間接経験」を得やすくし、かつ、それに対する自身の内省を言語化できるメカニズムがあり、経験学習のサイクルが回りやすい。リーダーシップの根源は「自分の内なる声を聞くこと」という考えに立てば、経験と内省を通じて自分自身のアイデンティティを磨いていく、というのはリーダーシップを磨く格好のシステムだ。この経験学習のサイクルが極めて合理的にかつスピーディに実現される、というのが、学びのフィールドとして捉えたネット空間の価値だ。

もう一つ重要なのは、ネット空間には「市場原理」があるという事だ。ここ20年ほどで「自分の市場価値を高めろ」という言葉が聞かれるようになってきた。だが、大企業に勤めるビジネスパーソンが社外の広い市場で腕試しをする機会はなかなか無い。一方ネット空間では、面白い発言は正当に評価される。逆に、価値の無い発言では目立つことはできない。自身を早いうちから市場原理にさらす恰好の場であり、特に今の10代から20代はそれを直感的に理解し、自分を磨いている。

というわけで、「低成長時代」「ネット」の存在が、今の20代〜30代のリーダーシップ開発を新しいものにしている、と自分は思っている。このあたりは今後さらに突き詰めて考えていきたい。