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【アジア式組織運営vol.3】リーダーの最も大切な仕事とは?

外部寄稿ブログ「アジア組織運営を考える」第3回です。


本コラムの読者には組織の中で人を引っ張るリーダーの立場に立っている人も少なくないでしょう。今回は「リーダー」の仕事について考えてみます。

●リーダーの最も大切な仕事=ビジョンを示すこと

「アジアで最も偉大なリーダー」と言われて、リークワンユーの名前を挙げる人は多いでしょう。マレー半島の小島に過ぎなかったシンガポールを一代でアジア随一の経済大国に育て上げた彼の功績は多くの人に認められています。彼が昨年惜しまれつつ亡くなりましたが、彼が発揮したリーダーシップからは多くの学びを得ることが出来ます。
シンガポールは中国系、マレー系、インド系などの多様な民族が住んでいる国で、民族間の融和が建国当初からの課題でした。それゆえ「多民族主義」(multiracialism) を掲げ多様性国家の維持に力を注ぎました。また、資源の無い同国が成長するには人材を育てるしかないため、「能力主義」(meritocracy)も重視し国家を運営すると宣言しました。こうした「ビジョン(=目指したい将来像)」を彼は何度も力強く語り、ついにはそれを実現してしまいました。

こうしたビジョンを掲げることは、日本人のリーダーはあまり得意ではないと言われます。なぜならばハイコンテキスト=文脈依存型の日本人は「全てを言わなくてもわかる」と考える傾向があり、わざわざどういう状態を目指すかを説明しなくても用が足りるからです。例えば「良い会社」といえば日本人同士なら何となくその定義はすり合います。しかし、外国人と仕事をする場合は「どういう点でよい会社なのか」をきちんと説明し合意しないといけません。あなたにとっての「良い会社」が「仕事のやりがいががある会社」だったとしても、相手は「仕事がラクな会社」だと思っている可能性もあり、その場合会社は全く違った方向に進んでしまいます。

ここで言っているリーダーは会社のトップなどに限りません。自分が人を引っ張る立場にあるのであれば、何かしらのビジョンを打ち出すことは大切です。「楽しい職場にしよう」「ミスを減らそう」といった基本的なレベルでも構いません。「こうありたい」という姿を一人一人が発信し、そして相互に影響を与え合うこと、これを「Shared Leadership」といいます。強烈なトップダウン組織ではなく、前回ご紹介した「Share」型組織であるアジアの会社には、こうした「たくさんのリーダーがいる」というスタイルのほうがマッチすると私は考えています。

●言葉ではなく「ストーリー」で示す

さて部下が外国人の場合、ビジョンを伝えるのはより難しくなります。なぜならば言葉が通じないからです。ここで一つ重要なポイントがあります。ビジョンは「ストーリー」で語るということです。

ストーリーとは「物語」のことです。子どもの頃に、枕元でお母さんに物語を読み聞かせてもらった人は多いかもしれません。「昔々、あるところにおじいさんがいました…」といったものです。そうした物語を聞いていると、我々の頭の中には「映像」が浮かんできます。時系列で具体的に話すことで人は頭の中にその風景を「思い浮かべる」ことが出来るのです(これを聴覚映像といいます)。そのようにストーリーで伝えることができると、言葉が十分に理解できなくても相手はそれを視覚的に理解することできます。大ヒット映画が海を越えるように、映像は世界共通なのです。

先に紹介したリークワンユーは、シンガポールにまだ何もなかったころに、「いずれこの国に高層ビルが立ち並ぶのが見える」と語っていたそうです。これも視覚に訴える語り方です。また、タイで働くある日本人マネジャーは、こんなビジョンを語っていました。「みなさん、思い浮かべてください。工場をみんなできれいにして、工場の景色を変えましょう」。そういった映像を浮かばせるビジョンを語ったとき、皆さんの話はきっとスタッフの心に残るでしょう。

●「We」を定義する

最後にもう一つ。ビジョンを語るときは相手といかに「仲間」になれるかが大切です。初回のコラムで、あるシンガポール人が「我々はAsianだ」と語ってくれた話を紹介しましたが、これなどはうまいやり方です。つまり「我々は同じなんだ、”we”なんだ」と思わせることで相手と同じ方向性を向くことが出来ます。

例えば職場に日本人とタイ人がいるとします。どうやったら我々は人種の違いを乗り越えて、「We」になれるのでしょうか。そのためには「共通項」を見つけることです。最も効果的な方法はお客様をトリガーにすることです。食品メーカーであれば「タイの人々の食卓により良いものを届けたい」という点で、我々は心を一つにできるはずです。先日バイクの会社さんで研修をしましたが、バイクという乗り物を愛するという共通項での仲間意識を彼らは強く持っていました。ビジョンの主語となる「我々」にはどんな共通項があるのか。そこに目を向けることで、「●●人」という「違い」をわきに置いておく効果を得られるテクニック、といえます。

さて次回以降もアジアにおける組織マネジメントのポイントについて、もう少し踏み込んで考えていきます。