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「知能」と「知性」について

久々に週末にバンコクに滞在しています。昨日はセミナーに参加してたくさん気づきを頂く機会となりました。脳が刺激されたので、少し考えをまとめておきます。


昨日の講師は非常に幅広い分野での知識が豊富で、最先端の領域の知識を、かつ一本の横軸を通しながらお話いただいた。脳のシナプスがバシバシ刺激される体験だった。また、その後はお酒をご一緒する機会を頂き、日本人のチャレンジをもっと増やしていけるのでは?とそんな会話をさせて頂いた。話題の豊富さもさることながら思考がとても柔軟で、とても刺激に満ちた時間だった。何か今後面白いことができるといいな、と思った。


さて仕事柄いろんな講師とも関わるし、自分自身も「考えること」「話すこと」を商売道具としているので、こういう魅力的な思考、コミュニケーションができる人にはどういう特徴があるのか?とよく考えたりする。昨日もそんなことを考えていたが、僕の中でふとつながったのが、田坂宏志さんの「知能」「知性」の話だ。以下、抜粋しながら少し思索を深めてみたい。

参照:日経ビジネスオンライン「なぜ、高額歴の人物が深い知性を感じさせないのか」

「知性」と「知能」は、何が違うのか?
実は、この二つは、全く逆の意味の言葉なのです。
端的に、この二つの言葉の定義を述べましょう。

まず、「知能」とは、「答えの有る問い」に対して、早く正しい答えを見出す能力のことです。

例えば、世の中には「知能検査」というものがありますが、この検査は、正解の有る問題を数多く解かせ、いかに迅速に、正解に到達できるかを測るものです。
すなわち、「知能」とは、まさに、「答えの有る問い」に対して、速く、正しい答えを見出す能力に他ならないのです。

(略)
 
これに対して、「知性」とは、この「知能」とは全く逆の言葉です。
二つ並べて述べましょう。

「知能」とは、「答えの有る問い」に対して、早く正しい答えを見出す能力。
「知性」とは、「答えの無い問い」に対して、その問いを、問い続ける能力。

すなわち、「知性」とは、容易に答えの見つからぬ問いに対して、決して諦めず、その問いを問い続ける能力のことです。ときに、生涯を賭けて問うても、答えなど得られぬと分かっていて、それでも、その問いを問い続ける能力のことです。

「問いに答えを出すこと」を重視する人と、「問いを立て続けること」を重視する人。身の回りの人にこういう違いがよく存在しないだろうか。


田坂氏は、「答えを出すこと」を求める知能は「答えのない問い」に直面すると、「割り切り」をしてしまうという。その「割り切り」とはいわば「楽になりたい」という心境であり、それは「魂の弱さだ」とまで言っている。


このことは例えば、日常のマネジメントでいうと「結論」「意志決定」の違いではないか、と僕は思っている。


例えば「●●商品を市場に投入するべきか?」という問いに対して、マネジャーの中には「合理的に考えてこれが正しい」と結論づけてしまう人がいる。ところが、およそマネジメントイシューというのは簡単に「結論」などでるものではない。もちろん環境分析をしてリソース分析もして・・とやるのだが、情報というのはどちらから光を当てるかで解釈も大きく変わってしまう。結局、合理的に導ける結論は「およそ確からしいだろう」というレベルまでしかいかず、最後はそれを信じるか信じないかは自分次第、となる。


その際に、分析結果を信じて「結論」を出して安心してしまうのが「知能」タイプのマネジャー。それに対して「そもそも結論なんて出ないものだ」という前提に立って、「問い続けながらも、現時点の答えとして意志決定する」のが「知性タイプ」のマネジャーだ。問い続けながら意志決定するからこそ徐々にその意思決定の精度は上がっていくし、また意志決定への「確信度合い」が実行フェーズの質に大きく影響するので、より成功の可能性の高い意思決定になる。


逆説的な言い方だが、「問えば問うほど確信が高まる」わけだ。企業のマネジメントの意志決定の難易度が上がる中で、この「知性」タイプのマネジャーがますます求められている、と私は仕事をしながら確信している。


セミナー講師の話に戻ると、「知能」タイプの講師は、未知の分野にもすぐに自分の経験やフレームを当てはめようとしてしまう。現象としては、人の話をそこそこ聞いたところで「あ〜●●ってことですよね。」とつい結論に持って行ってしまう。自分の考えの正しさを確かめに行ってしまう。説明を出来たことでスッキリしいたい、という「内なる不安」に負けてしまうのだ。


「知性」タイプのセミナー講師は「世の中には未知のことがたくさんある」「結論なんて出ないものだ」という前提に立っているので、未知のイシューに対して自分の考えが適用できるとは思っていない。すなわち知的に謙虚である。ゆえに、じっくり人の話を聞き、「どうしてそうなんですか?」という問いを繰り返す。そしてそのあとでじっくり自分の思索を深める。昨日の講師の先生はこの「知性」タイプだなぁ、と感じながらお話していた。


この「問い続ける」という姿勢は、非常にタフだと思っている。ふつう人間は答えが見つかる方が快感だからだ。ただ時々問い続ける姿勢を持つリーダーに会うと、その姿勢は魅力的であり一緒に考えていきたい、と思わせる何かを持っている。すなわちこの「知性」という要素はリーダーシップの中の重要な資質でもある、と最近感じている。


ではどう知性を磨いていくのか?という問いについては・・また項を改めて書いてみたい。今日はここまで。