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どこに地雷があるかわからないポリティカリー・コレクト問題

とある方のつぶやきで、LIXILのCMが話題になっていたので、感じたことをまとめておくです。



「結婚記念日に、妻にキッチンのリフォームを贈ろう」というものだが、「専業主婦を想定しすぎ」「LIXILは男性優位の会社だから」とプチ炎上している様子があり、「なるほど・・・これも人によってはアウトなんだ・・・」と驚いた。


「産めないのか」発言のような明らかなセクハラは論外なものの、このPC(ポリティカリー・コレクト)かどうかという問題は、必ずしも万人が問題を同じように認識できるわけではない、微妙なラインも存在すると感じる。また人によって持っている価値観もさまざまだから余計難しい。鈴木議員の謝罪会見で「結婚したくてもできない人への配慮が足りなかった」と発言していてまた驚いたが、かように人の価値観は違うわけで、それにPCという共通のものさしを果たして当てられるのか、というのはなかなか難しい。


これがグローバルを意識すると、さらに慎重な配慮が必要になる。記憶に新しいのはANA「日本のイメージ、変えちゃおうぜ」CMだろうか。



金髪に高い鼻をつけて「外国人」を表現したところ、不適切だと海外から反発を受けて放送禁止になった。「えっ、だめなの?」と思った日本人も多いのでは。ANAレベルの会社がこれをやってしまうのだから、世界のどこにPCのラインがあるのかを判断するのに日本人はまだまだ慣れていないと言えるのではないか。いやもちろん、日本人だけがそうであるわけではないだろう。


この件について岩瀬大輔さんはブログで以下のように解説してくれている。

問題となったのは、racial discrimination(人種差別) ではなく、racial stereotype(人種ステレオタイプ) であり、それに表象される人権意識、国際感覚の欠如である。この問題は、海外に出かける皆さんは、いわば世界のプロトコールとして知っておいた方がいい。

留学中に経験したのだが、国際社会ではとかくステレオタイプが嫌われる。マーケティングの授業で誰かが「夫が電器屋で買ってきたものを家で奥さんに評価してもらう」といった発言をしたところ、女性から「なぜ妻が家で待っているという専業主婦のステレオタイプを押しつけるの!」と怒っているのを見てから、ずいぶんと気を付けるようになった。FRB 議長になりそびれたラリー・サマーズ氏も、「女性は遺伝子的に数学(科学?)が苦手」といった趣旨の発言をして、ハーバード大学長の地位を追いやられた。

注意すべきは、ステレオタイプがNGとされるのは、「黄色人種は鼻が低い」というネガティブなことだけではないことだ。褒めてるつもりで「インド人は数学が得意」といった発言も、ステレオタイプ=偏見による決めつけということで、不快感を表す人がいるかもしれないので注意を要する。「どのグループにも多様な人間がいて、その多様性を理解し、受容すること」がいわば、人権感覚であり、国際感覚と考えられているからだ。そして、多数の人がどう感じるかではなく、不快に思う少数の人がいるかも知れないことを慮るのが、人権意識だと理解されている。


この「良かれと思って言ってもNG」というところが難しいところだ。実は僕自身も先日似た経験をした。「マレー人って明るいんですよね」と良いことを言うつもりで発言したら、アメリカ人から「Be careful. Don't generalize too much. (過度な一般化には気をつけてね)」とたしなめられた。少なくともその人はそういう点に留意して仕事をしているんだろうな、ということを感じた。人種のるつぼシンガポールだから余計そうなのかもしれないけれど。


「人によって感じ方が違う」「良かれと思ったことも不適切になりうる」ということを、ビジネスリーダーやマーケティングコミュニケーション担当者は常に頭にいれておかないと痛い目にあう可能性がありそうだ。冒頭のキッチンの話にしても、LIXILのマーケティングの担当者は、純粋に奥様を思う男性の気持ちを描きたかっただけのはずだ。そういう思いが裏目に出るというのは何ともやるせないのだが、少なくともPCについてはグローバルコミュニケーションのプロトコルとなりつつあるので、リテラシーを高めておきたい。