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通訳とコンサルタント

通訳・翻訳のよもやま話。

サッカー日本代表のザッケローニ監督が先日の惨敗の翌日の練習で選手に「謝罪」したと聞いて、どんな言葉で謝罪したのか?がとても気になっている。というか、イタリア語の謝罪を選手は解しないだろうから通訳が日本語に訳すんだろうけど、謝罪の言葉を口にしたとしても、「すまない」「申し訳ない」「悪かった」「ごめんなさい」、訳し方は色々ある。どう訳すかで全然ニュアンスは違ったはず。そして選手のメンタリティに与える影響も訳し方一つで大きく変わりうる。こういうクリティカルな場面での通訳ってどれほど重要な役割なんだろう、と考えてしまう。


若いころちょっとだけ通訳にあこがれて同時通訳のトレーニングをしたことがあるけど、教えてくれた通訳の先生のすさまじいスキルとストイックな努力に驚嘆した。その後も通訳士・翻訳士の本を読むのは好きで時々読んで来たけど、良い通訳は、「目的遂行のための訳」にこだわる人が多い。優秀な通訳は、通訳者としての仕事の範疇を逸脱しないまでも、クライアントの目的を理解したうえで、最も効果的な役を選びぬくパートナーとしてのパフォーマンスを出す。そういうプロフェッショナルな姿勢には正直憧れるわけだけど、実は個人的にはコンサルタントと通じるものがあると思っている。


たまたま今やってる仕事がクライアントの社長のメッセージ(日本語)を翻訳して、社員にフィードバックする、というものだったりする。社長の想いや事業戦略は理解しているつもりだけど、社長の難解な思想、戦略、を含んだメッセージをどう訳したら効果的に伝わるか?を考えながら訳さないといけない。これはなかなか骨が折れるわけなのだけど、単なる翻訳作業を超えて、経営的にも意義深い作業だと思う。


「コミュニケーションは組織の血流」であり、流れる血流の量と質が組織の活性度を決め、ひいては戦略の実行度も決める。海外組織においては、コミュニケーションの質が「言語ギャップ」によってグッと低下する。日本語から英語に訳すだけで、ニュアンスによっては100伝えたものが50になったり30になったりする。だからこそ量を増やさないといけないし、コミュニケーションの質にも相当こだわる必要がある。組織の血流を預かる人事スタッフやラインマネジャーにとって「言語変換によるコミュニケーションの質の変化」を敏感にかぎ取るセンスはとても大事だと思うし、自分のような外部の組織コンサルタントにも価値発揮の領域はまだまだあるように思う。