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アジア組織のリアル2 カントリーリスク

カントリーリスクをどう見るかという話。ここのところ東南アジアはキナ臭さを増し、投資判断がますます難しくなっていると感じる。

ベトナムが中国との関係から一層緊迫化している。タイは首相が失職しクーデターが勃発、相変わらず混乱が続いている。またインドは先日の選挙に最大野党が勝利し、モディ氏の経済改革を期待して株価が上がる一方で、国内の政治的対立の深刻化も懸念されている。インドネシアがどうなるかも今年の秋の選挙次第。シンガポールも2016年選挙までは慎重な政権運営を強いられるだろう。成長するアジア各国がそれぞれ問題を抱える中で、数年先を見据えてどの国に投資をするのか?どの国は様子見にするか?の判断は徐々に難しくなってきている。

「カントリーリスク」という言葉があるが、ともするとこの言葉は軽く聞こえる言葉だと感じる。リスクはどの国にも有るわけで、その先を考えないと判断ができない。

第一にどういうリスクがありそうなのかの具体化と、またリスクの背後にあるものを考える必要がある。例えばタイなどは、クーデターという異常事態から工場の建設を停止した日系企業も一部にあるが、実は冷え込んでいるのは内需だけで輸出向けは影響を受けていないと言われる。また軍事政権が登場して以来治安も安定し経済にはむしろプラスになっているという見方が強い。タイは1900年代で10回以上も軍事政権を経験している、いわば世界で最も軍政慣れした国家。出口の見えない勢力争いから、軍政が登場して秩序を取り戻すことを国民は歓迎しているフシもある。こういう状況を捉えれば、タイの軍政をアフリカ等と同様に捉えるのは早計と言えるだろう。

そして次に、全体を見て優先順位をつけることも重要だ。欧米の成長が鈍化し、中国の状況もやや不透明な中で、東南アジアの安定感と成長性に期待しないわけにはいけない。その際に、それぞれの国にあるリスクの中でも「比較的マシなところを選び、張り続けながら、状況を見てフレキシブルに対応する」ことが必要。一点賭けは確かに危ない。ここがダメならこっち、といった形で分散したポートフォリオを組む必要がある。全部リスクがある、と言っていては勝負ができない。

現地の情報交換では「そろそろ脱シンガポール?」「タイは大丈夫?」「カンボジアは意外とまだまだ?」といろんな憶測が飛び交う。もちろんそれぞれの思惑や見立てがあるので鵜呑みにはできない。いずれにしても「グローバルな視座で・・」とか「大局観を読んで・・」というレベルからもう少し踏み込んで、今年・来年というレベルで政治・経済・人の意識の流れを読むことが、目の前の意思決定に関わる話として、かなり重要なマネジメントスキルになってきていると感じる。