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ビジョンについて語る時に私の語ること

ブログをかなりサボってましたが、今日はつれづれに、「ビジョン」について最近感じることを書いてみます。

●ビジョンは「自分にしか見えない」くらいが丁度いい?

ビジョンという言葉の意味合いは、風景とか景色、展望といった感じだと思いますが、「視覚」という意味もあるように、「自分にしか見えない景色」というニュアンスで捉えるくらいがちょうどよいのでは、と最近思います。

話した瞬間に、他人にイメージが伝わってしまうようなビジョンでは面白くないし、革新的じゃない。むしろ、人に話してもすぐにはピンとこない、イメージが伝わらない、くらいの方が世の中を変えるビジョンなのではないかと思います。パッと聞いて頭に浮かぶようでは、どこかで見たことのあるようなもの、ということになってしまいますから。よく、「ちょっと妄想してみたんだけど・・」という枕詞でアイデアを話してくれる人がいますが、妄想するくらいでないと良いビジョンは出てこない気がします。

孫正義氏が、福岡で起業した時に、みかん箱の上に乗って「これからこの会社は豆腐屋のように1チョウ(兆)、2チョウと数を数えるような企業になる」といったら、気味悪がって社員が逃げてしまった、という話を聞いたことがあります。それくらい、野心的なビジョンというものは、万人には理解しがたいものなのだと思います。

この、「あなたには見えてないけど、私には見えている」というこの「風景の差」が、人を惹きつける根源のような気がします。ちょうど子供が大人に「お話の続きを聞かせて」とねだるように、人は自分が見えてないものを見せてくれる人に興味を抱き、その先の景色を一緒に見たいと思うのではないかと思います。


●ビジョンを掲げることの勇気と覚悟

とはいっても経営者の立場ともなれば、軽々しく夢想的なビジョンを掲げることが出来ない悩ましさがあります。ここではこれまで接した2社の例を対比してみます。

最近一緒にお仕事をしているA社様は、あるカテゴリーの業界No.2です。優秀な事業、組織を持ったエクセレントカンパニーですが、そのカテゴリーには先行者である圧倒的なNo.1がいて、その差は埋めがたいものがあります。A社様は、長く業界2位のポジションを保ってきました。

ところがA社の経営者は最近「業界No.1を目指す!」というビジョンを掲げました。これは同社の幹部、社員にとっても大きな衝撃でした。一定レベル以上シェアが開くとなかなかその関係性が逆転することは容易では無いというのは経営戦略の常識だからです。

社長のビジョンに対し「できるわけがない」「シナリオが描けない」という印象を持った社員も多かったと思いますが、敢えてその社長がビジョンを設定し、繰り返し語ることで、社員も徐々に「どうすればできるか」という思考に変わってきているように感じます。同社のエネルギーを見ているともしかしたら5年後〜10年後、シェアが逆転しているかもしれないと感じます。ビジョンの持つ力の大きさを感じるケースです。

一方で、数年前(前職時代)にご一緒した別のカテゴリーのB社様は、違ったアプローチを取っていました。そのカテゴリーも、圧倒的1位がある中でB社は「安定的2位」という同様の構図でした。

ある時の中期経営計画で、B社は「ダントツのNo.2」を目指すというビジョンを掲げていました。お会いしていた社員の方は「正直ワクワクしない」という事を言っていました。私も、ビジョンとしては「うーん」と感じましたが、今改めて振り返ると、このビジョンにたどり着くまでには経営者として葛藤があっただろうなぁ、と思います。

同社が直面していたのは、簡単に1位を目指すとは言えない業界構造でした。経営者としては、無責任なビジョンを掲げるわけにもいきません。一方で、現状維持では「彼はビジョンが無い」「方向性が見えない」と言われてしまう。そんな中で、ビジョンを”ひねり出さ”ないといけない経営者というのは辛いものです。もちろん掲げたビジョンは、覚悟を持ってやりきらないといけない。ビジョンを掲げるにも勇気がいるのです。

そんな中で「ダントツNo.2」というビジョンを考案した社長の心中を察するとなんとも切ない気がします。が、結果的にこのビジョンは社員を鼓舞できなかったという意味では失敗作だったと私は思っています。と同時に「よいビジョンが描けない」と悩んでいる経営者は結構多いんだろうなぁと思わされるケースです。


●最後は「心の声を聞け」

先日、政治家志望のお二人と食事をご一緒させて頂き、とても充実した時間を過ごさせてもらいました。お二人から政治家としてのそれぞれの魅力的なビジョンを聞きながら、ビジョンを描くにはどうしたらいいんだろう?と考えていました。

お二人の様子を見ていると、ワクワクしながら、自分の考えに確信を持って語っている。それが正しいかどうかとか、良いビジョンかどうかは、二の次。とにかく自分が描く未来に強い想いを持っていること。それがとにかく伝わってくる時間でした。

「自分の心の声を聞く」とか、「自分の価値観に従って生きること」といった、lead the self的な解釈でリーダーシップを捉える書籍が最近増えています。それが結果として人に対する影響力になるわけですが、影響力そのものに目を向けるのではなく、その原点として自分自身にどれだけ正直でいられるか、に着目する傾向があります。

これはとても重要で、組織の中に長くいると、「自分のホンネとタテマエ」の区別がつかなくなってきます。当初は、タテマエのつもりで言っていても、100回言うとそれがいつのまにか自分の本音であるかのように頭が信じ込んでしまう。だからこそ、自分のホンネに気付き、それに正直でいることには価値があります。タテマエでは人は動きませんから、リーダーにとってホンネを操れる能力/素養はとても大切です。

そう考えると、組織人として長くやってきた結果の終着点として社長になり、ビジョンを描けと言われるのはなかなか難しいものがあります。ビジョンを描けるリーダーの育成には、自分の心の声に正直になることを奨励する組織文化の形成と、定期的なホンネのアウトプットの機会が必要だと思います。


●私の語ること

私の会社はここ数年、「アジアNo.1」というビジョンを掲げています。

数年前は海外での知名度も今よりも全然なく、発表時、そのビジョンへのリアクションは「?!」というものもあったと聞きます。が、いつのまにやら様々な事業がスタートし、アジアに関わるビジネスも徐々に増えてきています。まだ手の届く目標とまではいきませんが、少しずつ現実として近づいてきている感覚もあり、やはり挑戦的なビジョンを掲げることは大事だと感じます。

私自身も、海外のクライアントに「アジアNo.1を目指しています」ときっぱりと語るようにしています。「あなたには見えていませんが、私には見えていますよ」と言わんばかりに。それが自分を鼓舞し、そして相手を惹きつけると思うからです。そんなビジョンの力を信じて頑張っていきたいと思う、今日この頃です。