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【アジア式組織運営vol.3】リーダーの最も大切な仕事とは?

外部寄稿ブログ「アジア組織運営を考える」第3回です。


本コラムの読者には組織の中で人を引っ張るリーダーの立場に立っている人も少なくないでしょう。今回は「リーダー」の仕事について考えてみます。

●リーダーの最も大切な仕事=ビジョンを示すこと

「アジアで最も偉大なリーダー」と言われて、リークワンユーの名前を挙げる人は多いでしょう。マレー半島の小島に過ぎなかったシンガポールを一代でアジア随一の経済大国に育て上げた彼の功績は多くの人に認められています。彼が昨年惜しまれつつ亡くなりましたが、彼が発揮したリーダーシップからは多くの学びを得ることが出来ます。
シンガポールは中国系、マレー系、インド系などの多様な民族が住んでいる国で、民族間の融和が建国当初からの課題でした。それゆえ「多民族主義」(multiracialism) を掲げ多様性国家の維持に力を注ぎました。また、資源の無い同国が成長するには人材を育てるしかないため、「能力主義」(meritocracy)も重視し国家を運営すると宣言しました。こうした「ビジョン(=目指したい将来像)」を彼は何度も力強く語り、ついにはそれを実現してしまいました。

こうしたビジョンを掲げることは、日本人のリーダーはあまり得意ではないと言われます。なぜならばハイコンテキスト=文脈依存型の日本人は「全てを言わなくてもわかる」と考える傾向があり、わざわざどういう状態を目指すかを説明しなくても用が足りるからです。例えば「良い会社」といえば日本人同士なら何となくその定義はすり合います。しかし、外国人と仕事をする場合は「どういう点でよい会社なのか」をきちんと説明し合意しないといけません。あなたにとっての「良い会社」が「仕事のやりがいががある会社」だったとしても、相手は「仕事がラクな会社」だと思っている可能性もあり、その場合会社は全く違った方向に進んでしまいます。

ここで言っているリーダーは会社のトップなどに限りません。自分が人を引っ張る立場にあるのであれば、何かしらのビジョンを打ち出すことは大切です。「楽しい職場にしよう」「ミスを減らそう」といった基本的なレベルでも構いません。「こうありたい」という姿を一人一人が発信し、そして相互に影響を与え合うこと、これを「Shared Leadership」といいます。強烈なトップダウン組織ではなく、前回ご紹介した「Share」型組織であるアジアの会社には、こうした「たくさんのリーダーがいる」というスタイルのほうがマッチすると私は考えています。

●言葉ではなく「ストーリー」で示す

さて部下が外国人の場合、ビジョンを伝えるのはより難しくなります。なぜならば言葉が通じないからです。ここで一つ重要なポイントがあります。ビジョンは「ストーリー」で語るということです。

ストーリーとは「物語」のことです。子どもの頃に、枕元でお母さんに物語を読み聞かせてもらった人は多いかもしれません。「昔々、あるところにおじいさんがいました…」といったものです。そうした物語を聞いていると、我々の頭の中には「映像」が浮かんできます。時系列で具体的に話すことで人は頭の中にその風景を「思い浮かべる」ことが出来るのです(これを聴覚映像といいます)。そのようにストーリーで伝えることができると、言葉が十分に理解できなくても相手はそれを視覚的に理解することできます。大ヒット映画が海を越えるように、映像は世界共通なのです。

先に紹介したリークワンユーは、シンガポールにまだ何もなかったころに、「いずれこの国に高層ビルが立ち並ぶのが見える」と語っていたそうです。これも視覚に訴える語り方です。また、タイで働くある日本人マネジャーは、こんなビジョンを語っていました。「みなさん、思い浮かべてください。工場をみんなできれいにして、工場の景色を変えましょう」。そういった映像を浮かばせるビジョンを語ったとき、皆さんの話はきっとスタッフの心に残るでしょう。

●「We」を定義する

最後にもう一つ。ビジョンを語るときは相手といかに「仲間」になれるかが大切です。初回のコラムで、あるシンガポール人が「我々はAsianだ」と語ってくれた話を紹介しましたが、これなどはうまいやり方です。つまり「我々は同じなんだ、”we”なんだ」と思わせることで相手と同じ方向性を向くことが出来ます。

例えば職場に日本人とタイ人がいるとします。どうやったら我々は人種の違いを乗り越えて、「We」になれるのでしょうか。そのためには「共通項」を見つけることです。最も効果的な方法はお客様をトリガーにすることです。食品メーカーであれば「タイの人々の食卓により良いものを届けたい」という点で、我々は心を一つにできるはずです。先日バイクの会社さんで研修をしましたが、バイクという乗り物を愛するという共通項での仲間意識を彼らは強く持っていました。ビジョンの主語となる「我々」にはどんな共通項があるのか。そこに目を向けることで、「●●人」という「違い」をわきに置いておく効果を得られるテクニック、といえます。

さて次回以降もアジアにおける組織マネジメントのポイントについて、もう少し踏み込んで考えていきます。

【アジア式組織運営vol.2】アジアに共通する価値観って?

外部寄稿ブログ「アジア式組織運営を考える」第2回です。

前回のコラムでは「日本人とタイ人は似ている」という点に触れました。ものの考え方や価値観が似ているということは組織運営上有利に働くはずです。ではどのような点が似ていると言えるのかをもう少し考えてみます。

●Harmony~家族的な調和を重んじる風土

私がタイの企業で顧客企業にインタビューするときに、「あなたの会社の風土を一言で表すと?」という質問をすることがあります。その際にスタッフの方からよく出てくるキーワードは「Family」です。会社の仲間と実際の家族であるかのように付き合い、食事やイベントなどを一緒に過ごす。そうしたことは多くのタイ人にとって重要な価値観ではないかと思います。
この文化は、基本的には日本も同じです。日本の会社の経営理念によくあらわれる言葉に「和」があります。集団の一体感、調和を重んじる組織風土が日本企業においては良いとされてきました。社員同士が「家族」のように付き合う考え方も日本においては長らく普通のことでした。象徴的なのは「飲み会」です。会社の人と頻繁に飲みにいきとことん話し合うことでお互いの思いを通い合わせる。そうしたことが日本の強い組織を作り、高品質なモノづくりに繋がってきました。

日タイいずれにおいても、家族的な信頼をベースにした調和型(Harmony)の組織が好まれてきたという意味での共通点はあるでしょう。

●「Share」という概念

少しその背景を考えてみます。「アジア」というもののルーツの一つには、農村の共同体の作り方があるといわれています。アジア的な農村においては、基本的には土地を「共同で」所有するのが普通でした。土地を共同で所有していますから、収穫も皆で分け合います。また、収穫するための労働も皆で分け合うというのがアジア的な農村の在り方の特徴です。対してヨーロッパでは、徐々に私有地をベースにした共同体に移行していきました。文化を大きな括りで比較してしまえば、欧米は個人主義、アジアは集団主義、という傾向がみられるのはこうした背景があるようです。

こうした「分け合う(share)」という概念はアジアの組織における仕事の仕方の一つのキーワードです。例えば「労働のシェア」。タイ人も日本人も、人を「助け合う」という価値観を好むという意味ではとても共通していると思います。例えばタイの研修でディスカッションをしていると「目標は個々人に割り振るよりもチームの目標として設定し、達成したらみんなでお祝いするほうが良い」という考え方を話してくれるタイ人マネージャーさんに出会います。このような考え方は、日タイ双方のメンタリティに合致するという意味で、日本人とタイ人が一緒に働くうえで非常に参考になります。

●文化よりも気になる「時代の価値観」

もう一つ別な視点を提示しておきます。先日、アジア各国の人々が「職場に求めるもの」を調査したアンケート結果が話題になりました。中国や韓国など東アジアの人々や、タイをはじめとする東南アジアの人々が選んだのは一様に「高い賃金」だったのに対して、日本だけが「人間関係」と「仕事内容」を選んでいた、という結果でした。こうしてみると「日本人は仕事が好き」「それ以外のアジアはお金が好き」というようにも思えます。果たしてそうなのでしょうか。(参考:http://www.mag2.com/p/news/193042

実は日本人も「お金が大好き」だった時代がありました。いわゆるバブル経済という時代です。当時の日本は好景気に沸き、「財テク」という言葉が流行り、皆が投資や不動産に興味を持ち、どうやってお金を増やすかを考えていました。実は、人の価値観というのはこうした時代の空気の影響を大きく受けます。特に10代の時にどんな世の中だったが価値観への影響度は大きいと言われます。タイもこの10数年目覚ましい経済発展をしてきたわけですが、比較的おカネを使うことが好きと言われる「Y世代」(=主に今の20代を中心とした世代)はそうした時代の影響を受けている部分があるかもしれません。でもそれは別にタイに限った話ではなく、経済が発展するとどこでも人々はそういう価値観を持つようになるのです。
こうした価値観のギャップは自国民同士でも日々感じているはずです。日本では昨今の若者世代を「ゆとり世代」と呼ぶことがありますが、価値観の異なる若者世代とどう一緒に仕事をしていくかは一つの大きな組織運営上のテーマとなっています。タイでも「Y世代」をどうマネジメントするかについての研修やセミナーを日常的によく見かけるにつけ、似た風景だと感じることがあります。

つまり何が言いたいかというと、どこでも似たことが起きているわけです。たまたま経済発展が違ったタイミングで訪れただけで、人間の価値観の形成のされ方は根本的には似ています。確かに外国人と仕事をしていると我々は日々価値観の違いに直面をします。それを「○○人だから」という風に短絡化してしまわずに、少し別な背景も想像して考えることができると、相手と自分の「違い」に振り回されずに、「同じ」という考え方で接することが出来るのではないでしょうか。

さて、このコラムはアジアの組織で働く読者に向けて書いていますが、その中には、人を率いるポジションについている方も沢山いるでしょう。次回からは、「リーダーの役割」について話を進めていきます。

会社経営について思うこと。

会社経営について、最近思うことをいくつか書いておきます。

1.「同じメンバーから違うアウトプットは出ない(出づらい)」

人間はある程度自分の得意なことが決まっているので、同じ人から新しいことはあまり出てこないな、と思います。出てこない人に「頑張って考えてみて」というのはお互いにアンハッピーです。

自分自身もそうで、色々と新サービス開発を試みていますが、作ったことが無いものを作るのは簡単ではなく、だったら作ったことある人に頼むか、どこかから借りてくるなりした方が圧倒的に速い。

イノベーション=組み合わせというように、新しいものを生み出したいのなら、いかに異分野の人を巻き込んで新しいものを作るかが問われると思います。マネジメントの役割は、そうした異分野の人を「知っていること」、その人を「巻き込める」こと、巻き込んで何かを動かす「スキームを作れる」こと、というなんじゃないかと思います。ちなみにその場合のポイントは「自分より優秀な人」にいかに「一緒にやりたい」と思ってもらえるか、だと思います。

2. 「限られたお客さんと複雑なビジネスをする(カスタマイズ型)」ことと「多くのお客さんにシンプルな商品を売る(プロダクト型)」ことは補完関係にある

起業するとこの2つのはざまで悩んでる人が多いなと思います。「どちらを取るか」という考えになりがちですが、むしろこの2つは両方ないと成り立たない、ということに合点が行くようになりました。 カスタマイズ型のビジネスモデルは「短期的な収益」「新しいナレッジ」をもたらしてくれる一方で、「顧客基盤の拡大」「長期的な収益」はもたらしてくれません。また複雑なビジネスはどうしても経験者がハンドリングしないといけないので、若いメンバーを育てるには不向きな仕事となります。 

プロダクト型のビジネスモデルはこれらの裏返しです。とりわけ「顧客基盤の拡大」による「長期的な収益」が得られ、またそこから「メンバーの成長」が得られるという意味でメリットが大きい。

大事なのは両社が相互依存関係にあるということです。カスタマイズ案件で生んだナレッジをプロダクトに還元しないとプロダクトは陳腐化する。一方でプロダクトで人を育てないとカスタマイズに投入できるリソースが増えない。「両方をバランスよく持つ」ということが必要だと思います。

3.「経営者が成長しないと会社は成長しない」

よく言われることですが、この「経営者の成長」という言葉を、最近はこういう風にとらえています。

一つは「新しい情報・ナレッジを取ってくること」。同じことをやっていてはサービスの競争力は落ちていきます。社長自身が一番勉強して、「新しい情報やナレッジを持ってくる」という価値を組織に提供して、メンバーからの信頼を得ることが大事だと思います。学ぼうとしないためにスタッフから見放される経営者は世の中に少なくないと思います。

もう一つは自分自身の「器を広げる」ということ。メンバーは、時に気に入らないことや予想外のことをします。それをどこまで「受け入れる」ことが出来るか。
もちろんしてはならないことはストップすることが必要ですが、単純に自分の価値観と違うだけで良いものをアウトプットしている場合は、「もしかしたら自分の基準が間違っているかも」と判断を留保して、「受け入れる」ということ。そうすことによってメンバーの能力を引き出し、活躍をサポートできると思っています。

4.「お金は使わないと入ってこない」

お金はあると思ってもすぐなくなるので、不安になると「お金を貯める」ことに走りたくなります。もちろんお金がたくさんあるのはいいことですが、それでもやはり「お金を適切に使う」ことの大事さを感じます。

事業会社の経営も、基本的には投資が少ないとリターンも少なくなります。つまり何に「張る」かというのが経営者の重要な判断となります。広告に投資しブランドを高めるのか、人に投資し戦力を拡充するのか。お金の使い方が上手い社長は、この「リスク無くしてリターン無し」ということがよくわかっている気がします。

また、お金を貯め始めるとどうしても「守り」のモードになってしまいます。守りモードになるとつかめるチャンスもつかめません。「攻め」続けて、ある程度危機感があるくらいのほうが経営者としては健全だと思います。

5. 「経営者はWHY(理念)を語り続けないといけない」

最近は経営理念のコンサルティングが多く、「ビジョン屋」さんみたいになってきているのですが、一方で自分たちの会社の理念をちゃんと語っているか?というのを気を付けないとなと思います。

WHY(理念)から語るのは抽象的だし、めんどくさいです。時々お客さんは「?」という顔を浮かべますし、スタッフは「またか」という顔をします。それでもなおWHYを語るのは経営者の仕事です。

有名なGolden Circleの動画でも明らかになったように、WHYは人の頭ではなく心に響きます。

心にメッセージを届けることは、採用場面で仲間になってもらうときでも、お客さんにサービスを買ってもらううえでも大事なことです。今の時代は「モノ」ではなく「コト」(体験や関係性)を求めているからです。

経営者がWHYを語らないと、スタッフはWHAT(サービス)の話しかしないようになります。そのほうがわかりやすくてラクだからです。しかし、WHATの話だけしているようではただの「業者」です。WHYの話ができるようになって初めて「パートナー」になれると思っています。


ということで、最近感じることを5つほどにまとめてみました。また定期的に学びをアップデートしたいと思います。

最近おもうこと。

最近思うこと。

最近の自分のアタマの中をメタ認知すると、数々のタスクを「右脳的」にとらえてマネジメントしてるなぁ、という感じです。例えるなら「ジグソーパズル」とか「レゴ」みたいな感じです。

例えば「新しいプロジェクト」という話が来ると、この仕事のカタチや形状は、誰の能力やモチベーション、とくっつくだろうか?と多面的に考えて、ピースがはまるかどうか考える感じです。

第一のピースはもちろん既存社員ですが、将来的に加入してくれるかもしれない社員候補、または「一緒に何かやりましょうね」と言っている社外の沢山の方々、というたくさんのピース群を、テーブルの上の山の中から取り出して、並べ替えたり違う方向から見たりして、お、ここ実はハマりそうだな、と思ったりしてくっつけていきます。どんどんピースがくっついていくと、そのジグソーパズルは大きくなり、つまりは組織としてできる能力、またビジネスの規模として広がっていくという感じです。

ピースをくっつけていく上で大事なのは、相手を理解する力です。人と会った時に、「この人はこういう仕事が好き・得意だろうな」というのが、注意深く話すと見えてきます。そういう記憶をちゃんと自分の引き出しに大切にしまっておいて、いつでも取り出せる状態にしておきます。そして未知の課題や困ったときには、頭の中のピース群から引っ張り出して、ご相談にいきます。「仕事を出す」とかそういう感じではなくて、ピースがはまる、つまり両者の求めるものが一致する、という状態を作らなくてはいけません。

また、メンバーの場合は「このメンバーにはこういう仕事があったら伸びるだろうな」という「成長課題」とともに理解しておくイメージです。例えば「この子は個々のタスクは強いけど、メタの視点や全体像をとらえる力が弱いから、逆にコンパクトに全体像をとらえられる仕事を一回経験させると一気に伸びそうだな」みたいなことを頭に入れておいて、そういう類の仕事が来たときの準備をしておく、または意図的に狙いに行く、みたいな感じです。

もう一つは結局やはり「自分」というピースの扱い方です。ジグソーパズルの場合は結局くっつくのは4か所です。レゴでもくっつく穴は限られているわけで、自分というピースになんでもかんでもくっつけるわけにはいきません。

だとしたら自分にくっつけるべき大切なピースは何なのか、つまり自分が時間を使う先は何なのか、を考えると、おのずと経営上の重要な活動に絞られます。それはブランディング、戦略立案、パートナーシップ、コア案件、メンバーの育成であったりします。それ以外のことは、まず自分以外のピースをくっつけて、その先にくっつけるようにしないと、完成作品が大きくなっていかないなー、と常にイメージしながら自分の仕事をデザインしていくことが大事だと思っています。

自分が倍の仕事の量をこなせれば、つまり自分というピースを大きくできれば、それもありかもしれません。そう思って最近やっているのが筋トレですがw、まぁそれでも既にかなり限界までやっている仕事量が2倍できるようにならないでしょうから、あくまで大事なのは他のピースをどううまく使うかなのかなーと思っています。

よく「経営はアートだ」といいますが、なんかわかります。僕なりの解釈はこうした、「全体の絵」をいろんなパーツや絵の具を使いながら仕上げていく、右脳的なプロセスだということです。若いころ音楽をしていた時に、楽譜と人を見ながら「音と音を繋げる」という作業をしていたことと、極めて似ているというか、本質はほとんど同じ作業だなぁ、と思ってそうしたシンクロを楽しんでいます。

新卒で海外で働きたい人にどうやって機会を作るか

海外で日本人同士で話していると、「”新卒で海外で働きたい”という若者」と、「それをあまりお勧めしない大人」という構図のコミュニケーションが時々あります。

双方に真剣な理由があって、学生からすると「日本の大手企業に入ってから駐在を勝ち取るまでに5年はかかる。貴重な20代の5年を費やす気にはどうしてもなれない」という熱い、そして強い思いがあります。

それに対して我々が伝える理由は以下。

1.日本の大企業の経験は一生の財産になるし、中途で大企業に入りたいと思っても入るのは簡単ではない→日本の大企業で学べることは多い。なんだかんだ、確率的には大企業に優秀な人が多い(企業によるけど)し、研修なども受けられる

2.海外現地採用で有益な就職が出来るとは限らない→これも企業によりますが、駐在員のサポート的な業務だったり、裁量権の少ない業務になりがち、というのがよくある傾向。

3.海外キャリアが必ずしも転職マーケットで高く評価されない
→グローバル人材、といいつつも海外経験だけではなかなか採用されることはなく、いかに有益な経験とスキルを身に着けてきたかが重要で(当たり前ですが)、「2」の項目と密接に絡みます

確かに上記のような状況としては事実としてあるでしょう。また、僕も大企業出身ですし大企業からキャリアをスタートさせるメリットは大いにあると思います。一方で上記のような理由を並べて若者の熱い思いにストップをかけてしまってよいのだろうか、という逡巡も正直あります。

また、「大手かベンチャーか」といった議論でもそうですが、会社をカテゴリーで捉える意味があまりなくなってきている時代であり、大手、ベンチャー、日本、海外、に関係なく「良い会社」というのは存在します。端的に言えば人材が優秀で、仕事を任せてくれ、その結果成長できる「環境」を提供してくれる会社です。そういうところに出合えれば、どの国にいようが、「入ってよかった」と思えるでししょう。

そういう意味では、「海外現地採用であっても、成長できる環境があって、転職マーケットでも評価される」ような「よい会社」が増えていけば上記の問題は解決されるわけで、それはひとえに雇用側の頑張り次第、だと思います。

大企業の現地法人の変革(現地採用にどんどん任せよう、という動きは徐々に進んでいます)に加えて、個人的には我々のようなベンチャーがその役割を果たすべきではないか、と思っています。

海外ベンチャーから優秀な日本人が(正確には日本人に限らないので「日本人も」ですが)どんどん輩出されるね、というような環境づくりを自社が率先して行っていきたいと思います。また、一社で行うよりもいろんな会社で行った方がインパクトが強い(社会的な認知を作っていくことが大事なので)ので、海外起業家の皆さんと一緒に取り組んでいけたらなぁ、と思っています。

私は「若者よどんどん海外に行け!」という論調にはあまり賛同していなくて、人それぞれ自分にあった人生を生きればいいと思います。

でも「どうしても行きたいのに行けない」のはややもったいなく、「行きたいと思うなら行けばいいよ」といえるような、適切な選択肢のある社会が望ましいなぁと思っています。

なので、「心の底からそう思うのなら、よくよく考えたうえで、イバラの道だと覚悟したうえで、行けばいいよ。ただしよい会社を選んでね」というようにしています。

まだつぶやきに過ぎないですが、つぶやかないと始まらないので、共感する方が増えて何か少しでも取り組みができるといいなぁ、とまずは思ったことを乱文ながらポストしてみました。今日は以上です。

会社を辞めてちょうど2年

そういえば会社を辞めてちょうど2年です。 
2年前の今頃は会社をやめて収入がゼロになったのでお金をとにかく使いたくなくて、「1日100バーツで過ごす!(=300円)」と決めてケチケチ生活をしてました。・・・といってもバンコクだと30バーツでおいしいご飯が食べられるので案外余裕でしたが(笑)
 その後多少お金が入るようになったので2か月後に家族を呼び寄せ、何とか子供を通わせる学校も見つかり、今では平和なバンコク生活ができるようになりました。職住近接のコンパクトな都市で、家族の時間がたくさん持てるこの生活はかなり気に入っています。
 一方ビジネスは相変わらず自転車操業で先はなかなか見えず、日々問題ばかりです。”HARD THINGS” と言うには大げさですが、様々なことに対して平常心を保たないとやってられないので、メンタルだけは強くなったかもしれません。それがこの2年の成長でしょうか。
 会社を始めてしまった以上は立ち止まると死んでしまうので、まだまだ走り続けなくてはいけないです。「いつまでタイにいるの?」とよく聞かれますが、それももちろんわかりません。とても居心地の良い国なのでできれば長くいたい思いもありますが、家族も居ますし、人生何があるかわかりません。 
いつなんどきタイを離れてもよいようにしっかりビジネスを安定させること、が今の大きな目標です。もちろんそこには今年通ったミャンマーや、タイ以外のASEANビジネスも含みます。
 リーダーの成長は会社の成長、とはよく言ったもので、自分の能力とキャパを上げないと会社の成長がついてこないことを最近は痛感します。特にうちはナレッジ産業なので、僕が普段からちゃんと勉強して進化してるかどうかはプロジェクトのパフォーマンスに直結します。現在6人のメンバーもすごく頑張ってくれてますが、自分自身がいろんな場所に出てインプットやアウトプットすることをもっと意識しようと最近思いました。ということで今年は日本に行く頻度を上げようと思ってます。
 ・・ということで頑張ります。
 ちなみに昨日日本から帰ってきたら(家族はまだ日本です)、電気料金の払い忘れで電気が止まっており、月曜まで家に泊まれません(涙)月曜日までは難民状態になっております・・・。そんな余計なHARD THINGSも起きつつも(汗)、笑い飛ばしていこうと思う、そんなバンコク3年目に突入です。

通訳とコンサルタント

コラム:通訳に必要な「コミュニケーション能力」とは?~コンサルタントの視点から

※日タイ通訳者グループへの投稿記事の転載です

 

皆さんはじめまして。普段はタイの日系企業やタイの企業の各種トレーニングや、人事評価制度、組織風土などのコンサルティングをタイ人チームとともに手掛けています。今回通訳の皆さん向けに「コミュニケーション」というテーマでの記事をリクエストを頂きましたので、普段企業の研修で伝えているような話の中から、みなさんの役に立つようなことを頑張って書いてみます。

コミュニケーションの話に入る前に、まず自己紹介もかねて、私が通訳という仕事に対して思っていることを書きます。私は大学生の頃に、少しだけ通訳に憧れた時期があり、日英通訳の勉強をしていたことがありました。実力が足りずすぐに挫折してしまいましたが、以来、通訳という仕事をされている方には強いリスペクトの気持ちを持ってきました。その後様々なキャリアを経て、直近は10年以上コンサルタントという仕事をしていますが、常々このコンサルタントという仕事は通訳という仕事と似ている部分が多いのではないかと思っています。

コンサルタント」という言葉にはどうも間違ったイメージを持っている方が多いように思います。弊社に入社を希望される若いタイ人の方の中には、クライアントに対してカッコよくアドバイスをするのがコンサルタントだと思っている方が時々いますが、そうではありません。自分は一歩引いてクライアントの話をよく聞き、必要なことだけを最低限伝えてクライアントを問題解決に向けてサポートするのが仕事です。コンサルタントというのはあくまで「黒子」(くろこ)、脇役のプロフェッショナルなのです。

こうしたあり方は通訳の方々も同じなのではないかと私は想像しています。依頼人であるスピーカーを超えて通訳が主役になってよい場面、というのは通常はあまり多くないでしょう。脇役のプロフェッショナルとして、スピーカーの魅力や考えを最大限引き出すためのスキルを発揮するのが通訳だと思います。そして、そこにおいて言語能力以上に大切なのがまさに「コミュニケーションスキル」だと私は思っています。コミュニケーションスキルは非常に多岐にわたりますが、特に通訳に必要と思われるスキルを以下に3つに分けて書いてみます。

 

1.わかりやすく話す ~抽象と具体のハシゴを行き来する~

コンサルタントも通訳も、すべてのベースになるのは「わかりやすく話す力」ではないかと私は思っています。通訳の皆さんは、クライアントの話がダラダラと長くて要点がわかりづらい場合、頭を抱えると思います。でもそれをなるべく整理して、わかりやすいタイ語に変換することを日々努力されているでしょう。コンサルタントも同じです。顧客から聞かされる課題や悩みのお話は複雑であることが多いですが、それを整理して「要するにこういうことですね?」とわかりやすくしてあげるとクライアントは価値を感じてくれます。こうした「話を分かりやすくする力」は通訳であってもコンサルタントであっても、我々のコアとなるスキルなのではないでしょうか。

そこでのキーは「抽象性」(abstractness)と「具体性」(concreteness) というキーワードです。普段皆さんが無意識にやっていることだとは思いますが、少し実例を用いながら解説してみます。

例えば私は企業から研修の依頼などを受けることが多いですが、最も多いテーマの一つが「リーダーシップのトレーニングをしてほしい」というものです。こうした依頼に「わかりました、リーダーシップですね」とすぐに反応してしまってはいけません。なぜならリーダーシップという言葉はものすごく解釈の幅が広い言葉でいろいろなことを意味している可能性があるからです。(こういう抽象度の高い言葉を”Big Word”といいます)

そこで「具体的にはどういうことを指しますか?」と聞いていくと「やっぱりリーダーですから一人一人の話をよく聞いて、Careする姿勢を身に着けてほしいです」という人もいれば、「リーダーらしく強いビジョンと力強い判断力を持ってほしいです」という人もいます。この場合、同じ言葉でも正反対のことを意味しています。これを確認せずに、Big Wordのままで受け止めてしまうと、およそクライアントが期待していたような研修にはならないでしょう。

通訳でも似たような状況は無いでしょうか。例えば日本人は「信頼」とか「誠実」とか、精神性を表す言葉が好きですが、これらの言葉も抽象度の高いBig Wordです。Big Wordは便利ですが、人によって意味が若干違う可能性があるということと、抽象度の高い言葉が並んだ話はわかりにくい、という弱点があります。

ゆえにこうした場合は「その人にとって“誠実”が意味するところ」をもう少し具体的に聞いていく必要があります。そうして例えば「誠実、それはつまり“嘘をつかない”ということですが・・」などと言葉を足していただけると言葉の理解も合いますし、聞き手からしても話が分かりやすくなります。こうした抽象度の高いワードをより具体化する作業が、話を分かりやすくする効果をもたらすと思います。(もちろん意図的に抽象度の高いままにしておきたいクライアントもいますから、ここはクライアントとの相談ということになります)

一方で、とにかく具体的であればそれでよいかというと必ずしもそうでもありません。具体的に話す人の特徴は、「話が長い」ということです。具体例をたくさん交えたり、描写を細かくすればするほど、話の「要点」がわかりづらくなります。そういう時は、「今のお話は一言でキーワードで表すと、何でしょうか?信頼ということでしょうか?」とか、今度は逆に「抽象化」のサポートをしてあげる必要があります。こうした具体的な情報に抽象的な概念を加えることを、「ラベリング(labeling)」といいます。イメージとしては、話のタイトル、「見出し」をつけてあげるような行為ですね。

つまり「わかりやすい」話というのは、「抽象性」と「具体性」のバランスがよく取れている状態、ということです。どちらかに偏り過ぎず、両者にうまく「ハシゴ(ladder)」をかけて行き来ができる状態を作れるのが、わかりやすい話の使い手ということになります。

 

2. オーディエンスを理解する ~知識レベルと言語レベル~

通訳には2つのお客様がいるのではないでしょうか。それはクライアント(client)(≒スピーカー)と、そしてオーディエンス(audience)です。いずれも大切な存在ですが、最終的に自分のコミュニケーションの「受け手」となるのはオーディエンスですから、そのオーディエンスをよく理解しておくことは特に大切だと思います。

普段皆さんは恐らく「参加者はどんな方ですか?」という確認をしっかりされると思います。これは私がセミナーなどをやるときも同じで、参加者がどんな能力を持っていて、どんな気持ちでその場に参加されるのかをよく確認するようにしています。例えば「自主的に」参加するセミナーと、「会社から言われて」参加するセミナーではモチベーションが180度違います。それはどういうセミナーの組み立てをするのか、に大きく関わってきます。

確認すべきポイントの一つは「知識」レベルです。相手が持っている知識によって、自己紹介一つとってもやり方が変わってきます。例えば私が自分の仕事を紹介するとき、「人事のコンサルティングをしています。例えば人材開発、人事制度、等のサポートをしています・・」という言い方をすることがありますが、これは相手がある程度ビジネスやマネジメントのことを分かっているときの説明の仕方です。

例えばこれが大学生相手にスピーチする際の自己紹介になると、「企業の経営者の相談に乗る仕事です。特にどうすれば社員が育つのか、どうすれば社員がやる気を持って働いてくれるのか、を一緒に考えていきます・・」といった言い方にするようにしています。相手が持っている知識レベルに想像力を働かせて、なるべくわかりやすく伝わるように内容を変えるのです。

通訳の場合はここまで話を変えることをするかどうかはわかりませんが、相手の知識レベルに合わせて話をしているな、という通訳の方には時々出会います。そうした方の話はやはり分かりやすいですね。

もう一つ意識すべきは「言語」のレベルではないでしょうか。つまりは使用するボキャブラリーのレベルということになります。

私は以前シンガポールとタイを行き来しながらセミナーをしていたことがありましたが、同じ内容であったとしても、使う英単語のレベルにはかなり気を使っていました。当然ながらシンガポールは英語圏ですので、それなりにProfessionalなvocabularyを使わないと、相手にインパクトを残すことは出来ません。しかし逆にタイに来ると英語のネイティブではありませんから、今度はなるべく平易な英単語を使わないと相手との距離感が出てしまいます。また話を理解されないのでは目的が達成されません。結果として、自分が話す英語はずいぶんと違ったものになっていきました。こうした相手を見た言語レベル、ボキャブラリーの選択というのも通訳の皆さんにとって大切なのではないでしょうか。

 

3. クライアントを理解する ~目的立脚で考える~

さて最後に3つめのポイントはもう一つのお客様、「顧客(client)」をよく理解するということです。

多くの通訳の方々は「顧客の依頼にどこまで忠実であるべきか」に悩むことが多いのではないでしょうか。例えば顧客の話がつまらない場合、「忠実」に訳せば訳すほどつまらない話になってしまいます。一方で、ある程度自分で話を加えたり工夫することもあると思いますが、程度が行き過ぎると原文への忠実性を欠きますし、クライアントにも失礼となってしまいます。

ちなみにコンサルタントも同じです。「言われたことだけ忠実に」やるコンサルタントもいますが、それだと必ずしも付加価値が出ない場合もあります。ある程度踏み込んで、言われてないこともやるバランス感覚が求められますが、これもクライアントとの距離感によります。

こうした通訳のジレンマを表した一冊の本があります。米原万里(Ms. Mari Yonehara)さんという女性通訳者が書いた「不実な美女か貞淑な醜女か」という本です。この本は私が若いころ通訳に憧れていた時に買って、それ以来愛読書になっています。この米原万里さんという方はロシア語の通訳として当時非常に優秀で、また有名な方でした。(その後残念ながら、若くして亡くなってしまっています。)

この「不実な美女」とは、「美しいが、夫の言うことを聞かない女性」を表し、「原文には忠実ではないが、美しい整った訳」の例え(メタファー)です。逆に、「貞淑な醜女」というのは、「醜いが、夫の言うことはよく聞く女性」という「原文には忠実だが、ぎこちない訳」ということの例えです。通訳のジレンマをよく表していると言えるかもしれません。彼女の文章を一部、抜粋してみます。

(Quote)
"世の中の通訳者は、圧倒的多数の場合において「不実な美女」か「貞淑な醜女」をしているのである。では「不実な美女」と「貞淑な醜女」とどちらがいいかと言うと、それは好みの問題だという風に男の人なら言うかもしれないが、通訳については、時と場合によるというのが正確な答えだろう。
例えばパーティーのような席では、(略)正確に情報を伝えるよりも、その時の雰囲気を損ねないような、あるいは盛り上げるような通訳が必要とされる場合が多い。(略)しかし、何億というカネの損得がかかっているような重要な商談の最中には、美しい訳よりも、日本語として響きがいいよりも、相手が何を欲しているのか、何で怒っているのかという事が正確に伝わる方が、はるかに大切。という事で、ケースバイケースで「不実な美女」がよかったり、「貞淑な醜女」が良かったりするわけだ。"
(Unquote)

 

 

...ということです。つまり「良い訳」の定義というのは時と場合によって変わるということです。少し言い方を変えると、それはクライアント次第、達成したい目的次第、ということなのではないでしょうか。

クライアントの話そのものがあまり魅力的ではない場合、多少の工夫でそこに魅力を添えることが時と場合によってあってもよいのかもしれません。より目的立脚で、クライアントの魅力を引き立てるためにやっていることなのであれば、そして事前の合意がそこにきちんとあれば、それは良い通訳といえるのではないでしょうか。

一方で、あまりに自分の判断で話を付け加えたり、また意訳を多くして「訳し過ぎ」てしまう場合は、行き過ぎとなる場合もあるでしょう。特にクライアント本人は「訳され過ぎて」いることに気づかないわけですから、それはそれで不誠実な状態です。また両方の言語がわかる人がオーディエンスにいるとその「訳の飛躍」には気づけてしまいますから、「あ、勝手に意味を足して訳しているな」という状況を見るとあまり良い印象を持たないと思いますし、通訳としての信頼を損なってしまうかもしれません。つまるところ、クライアントがどんな人で、何を伝えてほしいのかをよく理解することなのだと思います。

コンサルタントもそうですが、経験を積んでくるとついつい相手の事情や期待値を考慮せず、「自分のスタイル」が先行しがちになることがあります。自分のスタイルに自信を持つことは良いことですが、時にそれは過信や油断に繋がります。あくまで「脇役」であるのが我々ですから、クライアントの話に真摯に耳を傾けて、その場の目的に応じて、「不実な美女」なのか「貞淑な醜女」なのか、最適な解を選択できる存在でありたいものです。

 

さて、長くなりましたが、ここまでで通訳とコンサルタントの共通点に着目しながら、3つのポイントをご紹介してきました。

1. わかりやすく話す ~抽象と具体のハシゴを行き来する~
2. オーディエンスを理解する ~知識レベルと言語レベル~
3. クライアントを理解する ~目的立脚で考える~

これらのポイントが今後の皆さんの通訳のお仕事に少しでも役立つことを祈っていますし、また日タイを繋ぐお仕事を皆さんとどこかでご一緒できることを願っています。ありがとうございました。